ヴェネツィアの撮影では200年ぶりに開けた扉があった

――『懺悔室』はジャンルがひとつじゃなく、人間ドラマや怪奇、家族や恋愛などさまざまなテーマが含まれている面白さがありますよね。
そうですね。まるでおもちゃ箱のようなところがあります。いろんなものが詰まっていて、それが綺麗にパッケージされているような。そういう感覚を楽しめる映画になっていると思います。
――今回の撮影は、邦画初のイタリア・ヴェネツィアにてオールロケであり、サン・マルコ広場をはじめヴェネツィアを代表する名所での大規模ロケを実施したとのこと。高橋さんが特に印象的だった場所や気に入った空間について教えてください。
サン ロッコ教会の撮影ですね。僕らが撮影するために200年ぶりに開けたという扉があって。そこが教会と外の敷地の狭間みたいなところで、僕は撮影の合間そこで休憩していました。その空間が本当に独特でした。

――とてもくつろいでいられた?
イタリアのスタッフの方々はジョジョが好きで集まってくれた人もいらっしゃったので大きな熱情があって、それもとてもよかったです。彼らが機材を運びながら「コーヒー飲む?」とか何かと声をかけてきて、何気ない会話から、どんどん仲良くなっていって。200年ぶりに開けたドアの横で、そんなやりとりをしているのが楽しくて、面白いなと思ってました。
――そこが、劇中の“懺悔室”のある教会なのですね。
そうです。サン ロッコ教会にあります。また、終盤のシーンで露伴が立っている場所の左右の壁にはペストの時代の絵が描かれていて、一方がペストに苦しんでいる最中で、もう一方が克服後なんです。その真ん中に露伴が立っている構図が、非常に象徴的になっています。だからあのシーンではあまり動きを加えずに芝居をしています。

――シーン全体が一枚の絵になっている感覚ですね。露伴シリーズではこれまでも印象的なロケ地が多かったなか、今回のヴェネツィアもとても美しいですね。
これまでのシリーズでも、ルーヴル美術館はもちろん、国内外のいろいろな場所で撮影してきましたので、その延長線上という気がしています。ヴェネチアの空気感は映像にはっきり映っていると思うので、観客の皆さんにはそのあたりも楽しんでもらえたら嬉しいです。
――映画では原作の“その先”が描かれています。原作にないストーリーを演じることについてはいかがでしたか?
もともと荒木先生が書かれているものからその先に行った内容であったとしても、これまでに露伴を何度も演じてきた経験から、露伴ならこうするだろうと調律する感覚があります。また完成作を観た集英社の編集担当の方々が「まったく違和感がなかった」と言ってくれた時は、やっぱり嬉しかったです。
――最大のお墨付きですね。
それはとても大きかったです。僕たちも違和感はまったくなかったですし、(小林)靖子さんの脚本力と、これまで積み重ねてきたチームとしての自信が背景にあったので、何の不安もなかったです。
2025.05.23(金)
文=あつた美希
撮影=平松市聖