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深夜に訪れた大学生たちの会話

 30分ほどOさんと客席で雑談をしていると、店の大きなガラス窓の向こうに一台の乗用車が停まるのが見えて、2人は立ち上がりました。

 車の中から男女4人組が何やら話し込みながら降りてきました。

「いらっしゃいませ。おタバコはお吸いになられますか?」

「あー、いや、大丈夫です。お前は?」

「俺もいい」

「え、先輩、吸わないんですか?」

「うん、いいや気分的に……Iちゃんたちは?」

「私たちはタバコ吸わないので」

「じゃあ、禁煙席で大丈夫です」

「かしこまりました」

 Tさんがボックス席に案内したお客さん4人は、見た目や雰囲気から察するに自分と同じ大学生のようでした。

「何飲む?」

「ドリンクバーでいいっしょ」

「いやぁ……疲れたわ」

「だから、やめようって言ったんですよ、あんな病院行くの……」

「でも、結構盛り上がったじゃん。先輩から聞いていた噂関連のものは何にもなかったけどさ」

「Hちゃん、お供えの菊の花とか千羽鶴とか見てめちゃめちゃ叫んでいたよね」

「何回イジるんですかもう~。でも、絶対変ですよ、あの枯れてない菊の花」

「確かに、あれはビビったなぁ」

「ドリンクバーを4人分でよろしかったですか?」

「あ、はい」

「では、お食事のご注文がお決まりになりましたら、備え付けのボタンでお呼びください」

 メニューを眺めてはいるものの、盛り上がってなかなか注文してくれない4人にしびれを切らしたTさんは、そう告げるとそそくさとレジ前の待機場所に引き上げたそうです。

2025.05.04(日)
文=むくろ幽介