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33年前からしていた「小説を書く」宣言!

 担当編集の皆さんのお話から見える小説家・髙見澤さんは、熱意と「初々しさ」でいっぱいである。

「『特撮家族』のオーディブルも、ご自身で朗読するなど、新しいことに率先して挑戦されています。音楽で大きなことを成し遂げられている方ですが、小説が『余技』という感じはまったくありません。自分は一人の作家であり、この世界では新人だという謙虚さを感じます」(担当Hさん)

「そういえば、この間見つけた、30年以上前の雑誌、『サンタクロース』の連載記事にも、髙見澤さんは小説への思いを書いていたんですよ」(担当Mさん)

『サンタクロース』とは、1991年から1年余り、文藝春秋から刊行されていたエンターテインメント雑誌である。そのなかで、1992年9月号に掲載された連載コラム『アルフィー音楽アカデミー』で髙見澤さんが担当したページに、こんな小見出しがあったのだ。「いつか必ず自分でフィクションを書きたい」――。

「『作家のデビューに年齢は関係ない』という力強い言葉を誰かが言っていたように、50歳でも60歳でもデビューする人はいる。自分が感じてきたものを出せるような何かが自分のなかで爆発すれば、バーンといけるかなとは思っている。冗談じゃなく、きっといつかはやるつもりなんだ」

 今から33年前の記事だ。

 文庫版『音叉』のあとがきにも、こんなくだりがあった。

「小説家は自分の少年期=ジュブナイルからの夢であった。少年期の夢を還暦過ぎで叶えたからには、長く温めた分だけ、テーマは無限にあるはずだ」

 夢を追い続けた長い長い時間が、物語になっていく。

 初めて『特撮家族』を読んだ時、私は、右往左往する美咲や健太や結衣に、笑って心配して勇気をもらって、幽霊として彼らを見守る洋介に父を重ねて泣いた。

 そして同時に、なぜか、昔大好きだった小説家をブワッと思い出した。赤川次郎や吉本ばなな、氷室冴子、原田宗典、新井素子の新刊が出るのを、本屋をうろつき待っていたあの頃。SF、昭和文豪、少女小説といったバラバラのジャンルがひしめき合う本棚を、眺めているだけでも幸せだったあの頃。改めて読み返したい!

 本当に不思議。髙見澤俊彦の小説は、それ自体が素晴らしいだけでなく、私の人生を彩ってくれた作家を次々と思い出させる。「好き」が詰まっている作品は、他の「好き」も復活させるのだ。

 さて、最後に、髙見澤作品すべてに共通する魅力。その物語から音楽が聞こえてくることである。

 ロックあり、昭和歌謡あり、フォークあり。景色や時代が見えるものばかりだ。今回は、3作品に登場する楽曲をご紹介。このリストを見て(聴いて)、ストーリーを想像するのも粋な入口だ。レッド・ツェッペリンの「天国への階段」が3作品すべてに出てくるのも熱い。

 そして余計なお世話ながら、小説を読み、私が勝手に思い浮かべたTHE ALFEEの楽曲もリストに入れておいた。「これもぴったりだぞ!」という曲があれば、共有するのも楽しそう。物語と音楽の組み合わせはいくつあってもいい!

 音になり、文字になり、流れてくる夢のパワーで、花粉症なんて吹っ飛ばせ。この春、新たな世界が広がりますように。

 最後に、『特撮家族』の主人公・美咲の決め台詞を、元気と勇気の合言葉として叫びたい。

 さあ、皆さんご一緒に。

「ファイトマン、全力!」

2025.04.16(水)
文=田中 稲