■タイヤル族の食文化を伝えるレストランへ


夕食はホテルのレストランでも食べられますが、台湾原住民族の文化を知りたくて、タイヤル族の食文化を伝えるレストラン「山清休閒農園」へ。ここで料理を作る古屏生さんはタイヤル料理の達人で、メディアやイベントでも大活躍。新竹県原住民部落大学・山清部落教室を開催して地域の子供たちにタイヤル族伝統料理体験も行っています。
■初めて食べる料理なのに美味しくて懐かしい

これは、いったいなんだろう? 前菜か、デザートか? でも最初に出ているのだから、きっと前菜的なお料理のはず。と、おそるおそる食べてみると、あら、美味しい!台湾原住民族料理のひとつ「樹豆牛皮凍」という料理でした。樹豆(ツリマメ)は、和名「キマメ」で亜熱帯から熱帯地域では栄養豊富でポピュラーな食材、そして牛皮の部分は、豚足のような食感で旨みたっぷり。日本でいう煮凝りに似ているけど、もうちょっともっちりプルプルの食感。これは、絶対に肌プルプルになるはず。

豪快な肉料理の真ん中は、タイヤル族の料理に欠かせない馬告(マーガオ)入りの腸詰。馬告は、黒胡椒のようなピリッとした辛味とレモングラスの香りにたとえられる山椒のような豊潤さを併せ持つ伝統のスパイス。粒のまま入っている馬告ソーセージは、ほんのり甘辛でスパイシー、お酒が進んでしまう味わいです。豚肉の馬告焼きや、野鳥も皮がパリパリで元気がでる美味しさです。

くるんと巻いた葉先が可愛い「山蘇(サンスー)」は、台湾原住民の食事に欠かせない山の野菜のひとつ。鉄分、カルシウム、食物繊維を豊富に含みシャキシャキとろりとした食感でとても美味しい。山地に育つシダ植物で和名はオオタニワタリ。

もちキビは大きな葉っぱにくるんで蒸し焼き、芳ばしくてもちもちで、ついつい食べてしまって、気が付けばはち切れそうにお腹いっぱいです。
台北からちょっと足を延ばすと、豊かな自然に育まれた秘境の美人温泉が待っています。そこには、台湾の原住民族の美と健康を支えてきた、美味しくて元気になる食文化が継承されていました。

石井宏子の温泉ステイで巡る台湾
2025.04.11(金)
文・写真=石井宏子