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 おづまりこさんの旅コミックエッセイ、第2弾『ゆるり 愛しのひとり旅』(文藝春秋)が2月に発売されました。

 おづさんは20代、30代は東京住まい。アラフォーで関西に移り住んでいます。本作では奈良や尾道、倉敷……ちょっと足を延ばして北海道へ。神戸では、もはやおづ流ひとり旅の真骨頂といえる「パンを買う旅」を。

 自由気ままで、おいしいものがいっぱい。一般的な旅のイメージにとらわれることなく、マイペースに楽しむ旅の醍醐味についてお話をうかがいました。(全2回の1回目。後篇を読む)


目指すは「大変なことはしない」旅

――「ひとり旅」シリーズも2作目となりました。前作の反響を受けて意識したことはありますか?

 「こういう旅もあったのか」みたいな感想がけっこうありましたね。「これぐらいの旅でいいんだよね」「こういう旅ならしてみたい」と言っていただけてうれしかったです。今回は範囲を広げて、札幌とかちょっと遠くに行ってみようという挑戦がありました。それでもスタイルは変わらず、これまで関西の近場でやってきたようなことをやりたいなと……「せっかく遠くに来たからもっとすごいことしてやろう」みたいなことは考えないように、自分の好きなもの、小さい楽しみを集めていこうと改めて意識しましたね。

――その姿勢こそがおづまりこさんらしさです。自分自身、いかにふつうの旅という概念にとらわれていたのかと思いました。

 私もかつてはそれにとらわれていたから、旅が苦手だと思っていたんですよね。「旅=大変」みたいな。よく考えたら、自分が大変だと思うことはしなくていいんですよ。

――ホテルの過ごし方も楽しいです。第1章(奈良)では、長年の憧れだった古民家カフェ「くるみの木」のケーキをテイクアウトしてホテルに持ち帰っていますが。

 旅先でケーキをテイクアウトするのはいつかやろうと思ってたんです。「くるみの木」は1日目は入れなかったので翌日の予約をして……ひとまずケーキは買って帰ろうと。それはその場で決めましたね。「ホテルで食べたらいいじゃん」って。コーヒーのドリップパックも買えば、ホテルで「くるみの木」ができるなと。でも、ホテルに帰ったら湯呑みしかなくて。湯呑みにむりやり入れたのもおもしろかったです。

――夜の「リラックスグッズ全部載せ」は最高ですね!

 最近やっと、ホテルでどう過ごすかまで考えられるようになってきました。「リラックスグッズ全部載せ」は横たわってるときめちゃくちゃおもしろいんですよ。もうリラックスする以外に何もできないし。「私、何してんだろ?」って感じで(笑)。家だとさすがにここまでやらないですよね。あと、私の旅はめちゃくちゃ歩くのですごく疲れるんですよ。2万歩とか歩いてる日もある。奈良は特に歩く旅になるとわかった時点で、ここで全部載せをやろうと決めたんです。

2025.04.12(土)
文=粟生こずえ