この記事の連載

『ネムルバカ』はみんなの心に響く映画だと思う

――W主演の久保さんについても伺いたいです。入巣役の久保さんは、すごく人見知りだそうですね…?

 めちゃくちゃ人見知りでした。撮影に入るまで、全然話せていなくて。2回ぐらい本読みの機会があったので、会ってはいたんですけど。ルカと入巣の関係性もあるし、仲良くなりたいけどなぁ、でもどうしたらいいんだろう、と最初はちょっと不安だったんです。

 でも全然大丈夫でした。クランクインが女子寮での二人のシーンで、3日間かけてずっと撮影。朝から晩までいたので自然に距離が縮まって、仲良しになりました。しーちゃんは、人見知りだけど仲良くなったらめちゃくちゃお話好きで。途中からは「今、猫かぶってるんです」なんて言われたりして(笑)。

――お芝居をしてみての印象は、いかがでしたか?

 最初の対面シーンから「めっちゃ入巣だ!!」とびっくりしたのを覚えてます。しーちゃんはすごく一緒にお芝居しやすいし、私の好きな演技の仕方をしますね。

――平さんの好きなお芝居のスタイルと言うと、どんな感じなんですか?

 まさに今回の阪元(裕吾)監督の映画のようなスタイルですね。日常風景を撮る監督だからこそ、ザ・セリフという感じじゃなくて、ナチュラルに自然体にしゃべっている感じ。そうした日常を出せるお芝居がすごく好きです。

 しーちゃん自身も、普段からそういうタイプなんですね。声を張らずに、自分の周りの空間にだけ伝わるように話すような。そのスタイルを役でもそのままできているので阪元(裕吾監督)ワールドにぴったりだし、これもう入巣じゃんって思いました。私も同じようにやりたいんですけど、普段は逆でハキハキ系なので(笑)。今回は私も阪元ワールドに合わせて意識して話しています。

――渾身の作品ですが、初号をご覧になったときはどんな思いになりましたか?

 初号は樋口(幸平 ※伊藤役)くんだけ来られなかったんですけど、監督と一列になってキャストみんなで観ました。上映前、監督が「この映画はコメディなんで、笑ってください」みたいなことを言ったんです。「コメディ映画は嘘だよね」と思っていたんですけど、隣の隣にいた綱(啓永 ※田口役)くんと監督がめっちゃ笑うんです。確かに、それぞれのキャラクターがユニークだから、ふつふつ笑いがこみ上げてくるんですよね。

 でも、最後は私もしーちゃんも涙でしたね。グッときましたし、「これは最後まで見逃せないぞ」とも思いました。自分が積み重ねてきた今までの出来事を振り返ったりできるような、自問自答させられる映画だなと思いました。

――おっしゃる通り、大人も感動する映画に仕上がっていますよね。CREA読者にもぜひお勧めポイントをお願いします。

 男女・世代関係なく、何かを受け取ってもらえる言葉がある映画になったと思います。入巣とルカを見ていると、「生きているだけで頑張ってるね、えらいよ」と褒められている感じになるんですよね。美しく生きようとしなくていいんだな、というか。

 自分の気持ちに素直に、日々を自然体でありのままの自分で楽しめればいいなと私自身も思えました。ぜひ読者の皆さんにも仕事終わりとかにフラッと劇場に行かれて、感じてほしいです。

 特に最後のシーンは人それぞれの考え方があると思います。何かしらの答えを一緒に見つけてもらえたらなと思います。

平 祐奈(たいら・ゆうな)

1998年、兵庫県生まれ。映画『奇跡』のオーディションに合格し、俳優として活動をはじめる。2015年『案山子とラケット 〜亜季と珠子の夏休み〜』で、映画初主演、2022年にはミュージカル『奇跡の人』のヘレン・ケラー役で舞台初出演を果たす。同年公開の映画『恋は光』で第44回ヨコハマ映画祭 2022年日本映画個人賞・最優秀新人賞を受賞。

『ネムルバカ』

■原作:『ネムルバカ』石黒正数(徳間書店 COMICリュウ)
■監督:阪元裕吾 ■脚本:皐月彩 阪元裕吾
■音楽:立山秋航 ■主題歌:「ネムルバカ」(作詞:石黒正数/作曲:朝日/歌:平祐奈 as 鯨井ルカ)
■制作プロダクション:Libertas
■配給:ポニーキャニオン
■出演:久保史緒里(乃木坂46) 平祐奈
綱啓永 樋口幸平 / 兎(ロングコートダディ)
儀間陽柄(the dadadadys) 高尾悠希 長谷川大
志田こはく 伊能昌幸 山下徳久 / 水澤紳吾
吉沢悠

次の話を読む秘訣は「挨拶」と「質問攻め」と「めげない心」。平祐奈の“スーパーコミュ力”3か条とは

2025.03.27(木)
文=赤山恭子
写真=杉山秀樹
メイク=
スタイリスト=