この記事の連載
小林聡美さんインタビュー #1
小林聡美さんインタビュー #2
「大人」のレイチェル・カーソンが私たちを導く
――小林さんご自身が庭仕事をされたりして自然と触れ合っていることも、先ほどおっしゃった「年齢を重ねて気づく」に繋がっていたのでしょうか。
小林 そうですね。人間も地球の一部として、生き物として自然に対する興味がおのずと生まれる時期があるような気がします。私自身も30歳を過ぎた頃からなんとなく鳥に興味を持ち始めて観察したり、植物の名前を覚えることが好きになったり……そうやって楽しむことが続いています。人間はやっぱりそんな風に自然に共鳴していく生き物なのではないかな、と思ったりします。

――わかる気がします。私も、若い頃よりも自然が好きになった感覚があります。
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小林 作中では「わたしたちが住んでいる世界のよろこび、感激、神秘などを子どもといっしょに再発見し、感動を分かち合ってくれる大人が、すくなくともひとり、そばにいる必要があります」「子どもが知りたがるような道を切りひらいてやることのほうがどんなにたいせつであるか」とも語られているのですが、まさにその「大人」がレイチェル・カーソンで、「子ども」が私たちなのかな、と読みながら思いました。
この作品に触れることで、今まで経験してきたけれどぼんやりとしていたことが、すごく鮮明によみがえる感じ。まさに「センス・オブ・ワンダー」、自然を感じる感覚をよみがえらせてくれるというか……。
――ちなみに、今はどんな植物を育てていらっしゃるんですか?
小林 一時期食べ物を育てていたんですがあまりにもたいへんで、ちょっとお休みしていて。今は観葉植物を。でもそれもすごく長生きでもう10年以上になるので、家族みたいな感じになっています。剪定するときも、「ちょっとごめんね」みたいな感覚がありますね。
自分が思う大人にはなっていないけれど
――小林さんご自身もエッセイストとしてたくさんの本を書かれていますが、エッセイストとしてのレイチェル・カーソンをどう観ていますか?
小林 いやいや、私を引き合いに出すのはお門違い(笑)。彼女は視点が大人ですし、伝えたいテーマが本当に美しいですから。
――小林さんのエッセイや、そこに書かれているマインドは「大人」ではない……?
小林 そうですね。経験はそれなりに積んできているつもりですけど、私が思っている大人ではないです。レイチェルさんは、言うことに迷いがないじゃないですか。でも私は「〜かも?」という感じ。断言する力強さ、覚悟、潔さをレイチェルさんには感じます。
――ただ、以前小林さんのエッセイ『茶柱の立つところ』についてお話を聞いた際も「読んでこの先を生きていく勇気が湧いた」とお伝えしましたが、小林さんの迷っている姿も、読む者に勇気を与えてくれるのかなとも思います。
小林 読んだ方が「安心して迷える」と思ってくださるのであれば嬉しいです(笑)。

『センス・オブ・ワンダー』
作品名:センス・オブ・ワンダー
著者:レイチェル・カーソン
ナレーター:小林聡美
配信日:Audible にて、アースデーの2025年4月22日より配信
URL::https://www.audible.co.jp/pd/B0F48MQ35R
雨のそぼ降る森、嵐の去ったあとの海辺、晴れた夜の岬。そこは鳥や虫や植物が歓喜の声をあげ、生命なきものさえ生を祝福し、子どもたちへの大切な贈り物を用意して待っている場所……。未知なる神秘に目をみはる感性を取り戻し、発見の喜びに浸ろう。環境保護に先鞭をつけた女性生物学者が遺した世界的ベストセラー。
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衣装
黄色トップス、パンツ/nooy
アクセサリー(ピアス、ネックレス)/CASUCA
問い合わせ先
「nooy」
東京都中央区日本橋堀留町1-2-9 3階
03-6231-0933
「CASUCA」
カスカ(CASUCA HISTORIA/カスカイストリア)
東京都目黒区目黒3-12-11
03-6452-3196

2025.04.22(火)
文=釣木文恵
写真=杉山拓也
ヘアメイク=尾花 ケイコ(PINKSSION)
スタイリスト=三好 マリコ