この記事の連載
柚香光さんインタビュー【前篇】
柚香光さんインタビュー【後篇】

元宝塚歌劇団花組男役トップスターであり、その麗しい姿とダイナミックなダンス、爪の先まで役柄に入り込む繊細な演技で、多くのファンを魅了し続けてきた柚香光さん。退団して約1年というこのタイミングで2025年劇団☆新感線45周年興行・初夏公演 いのうえ歌舞伎【譚】Retrospective『紅鬼物語』に出演されることに!
柚香さんの退団後初めての芝居作品への出演であり、その役柄は“鬼”なのだとか。ダンス、お芝居、歌……と、すべての分野に秀でた才能を持つ柚香さんが、この作品に賭ける思いとは? 10代の頃は当日券を購入して実際に会場へ足を運んだという大好きなカンパニーである劇団☆新感線への思いなども伺いました。
「娘・母・妻・鬼」という初めての役柄への挑戦

――まずは大好きだという劇団☆新感線への初出演ですね。『紅鬼物語』の脚本を手にされて、どういう印象を持たれましたか?
台本を開くときはいつも緊張感があるのですが、今回も書き下ろしてくださった台本の1ページ目を開いたときは身の引き締まる思いで読み進めました。
個人的にも自分が演じさせていただく『紅子』という存在のことがとても好きで、自然に心が引っ張られるというか、そんなふうに人を魅了する役をいただけたことが本当に嬉しかったです。
彼女の生き方や葛藤、迷い、苦しみなどを感じながら読ませていただきました。
――今回は人間ではなく、鬼という役柄です。その設定に関してはいかがでしょうか?
鬼という架空の存在を演じさせていただけるのも嬉しいです。
演出のいのうえ(ひでのり)さんも製作発表の際におっしゃっていましたが、生々しくてグロテスクという面もありますし、その鬼の『紅子』に心が動かされる場面もいくつもあるんです。これが、いのうえさんの演出でどのように息づいていくのか、それがとても楽しみです。
――“男役トップスター”の柚香さんとは、まったく異なる姿を拝見できそうです。
鬼は架空の存在ではありますが、私たち日本人にとっては幼少期から身近にある存在で、“鬼”と聞けば頭の中にすぐイメージが湧くと思います。
そういった“架空”で“人間でない役”を私が演じることで、今までとは違う面がお見せできるのではないかと思っています。
加えて、ただ鬼というだけでなく、彼女は母親であり妻でもあり、そして彼女の娘時代も演じます。私には今までなかった役どころなので、そこもまた新鮮なのではないかと思っています。
また、劇団☆新感線の舞台の世界観や、音楽や照明など総合的なものによって、さらに私の新しい面を引っ張りだしていただけるのではないでしょうか。
共演者の方々と一緒にお芝居をさせていただくことも、また新たな私自身の発見に繋がると思いますし、今まで見せたことのない顔がいくつも出てくるのではと思っています!

――この『紅子』というお役にむけて、どんなふうに役作りをされていますか?
平安時代の貴族や農民たちの暮らしについて調べるなど、本読みの前にそういったベースの部分から調べていきました。
それだけでなく、さらに『紅子』は妻であり、母であり、鬼であるという立場が絡んできます。いろんな側面があるということだけでも複雑ですし、架空の存在を演じることもとても難しいと思っています。
演出のいのうえさん、脚本の青木(豪)さんの頭の中に描いていらっしゃるものを柔軟に取り入れることが必要だと思うので、そこを確認しながら自分の役作りができればと思っています。
――ポスターヴィジュアルもすごく素敵でした。撮影をされたあたりから、ご自身の中にもイメージとして湧いているものがありましたか?
真っ赤な衣装の下には長袴を履いていたのですが、平安の着物というだけでなく、長袴がグッとおとぎ話の世界へと私を誘ってくれた気がします。
あとは、赤い衣装のパワーをすごく感じました。赤い色はすごくエネルギーを持っている色だと思うので、身に纏うだけでスイッチがカチッと入るような。今は、赤という色をとても大切に思っています。
2025.05.10(土)
文=前田美保
写真=佐藤 亘
スタイリスト=大園蓮珠