「子供がいないことを申し訳ないと思う必要はない」
原 私の病気や、子供を産めなくなったことについてのインタビュー記事を読んだそうです。姉はすごく長い手紙を書いてくれて、「子供がいないことを申し訳ないとか、そんな風に思う必要は全くない」と伝えてくれました。その手紙に、夫が初めてご両親に私の病気について告白した時のことが書いてありました。
夫の父が「お前が千晶さんを支えるんだぞ」と快諾した時、実は母は複雑な気持ちだったそうなんです。その理由は、「子供ができないこと」ではなく、「もし病気が治らなくて、お相手の女性が先に旅立ってしまったら、息子は生きていけるんだろうか」という心配でした。父が決定したことに口出しはしなかったものの、姉にだけは「お父さんったら簡単に決めちゃって……」と素直な気持ちを打ち明けていたんですね。
――その事実を知って、原さんはどう思いましたか?
ADVERTISEMENT

原 何だかすごくホッとしました。夫の父の話はちょっとした美談で、講演会や取材などでお話しすると皆さん感動してくださるんです。でも、その話をしている自分に対して、「美談に酔っているみたいで気持ち悪いな」と感じることもありました。でも「本当は母にも人間臭い葛藤があったんだ」と知ることができて安心しました。
姉は手紙で、「結婚後、母は千晶さんを娘として受け入れて触れ合っていく中で、心配していたことなんかすっかり忘れちゃって、今はケロッとしている。母から『子供がいないから困る』なんて1回も聞いたことがないよ」とすごく素敵な文章で知らせてくれました。
夫の母とは敢えてその話はしていないのですが、何だかすごく母らしいエピソードだなと思います。うちの夫は、母にとってはたった1人の最愛の息子なんです。そんなに簡単に「はいそうですか」とは言えないよね、と納得した気持ちが大きかったです。十数年越しに母の思いを知ることができたことが嬉しかったですね。
〈「もう芸能界の第一線には戻れない」と悩んだこともあったけど…2度のがんで多くのものを失った女優・原千晶(50)「それでも今は幸せな理由」〉へ続く

2025.02.13(木)
文=都田ミツコ