ジャズバー「DUG」創業者で、写真家の中平穂積さんが、12月1日、ご病気のため東京都内の自宅で亡くなり、葬儀が近親者で営まれました。
中平さんは、1960年、日本大学芸術学部写真学科卒業。日本におけるジャズカメラマンの第一人者として活躍しながら、61年、新宿にてジャズ喫茶「DIG」、67年にジャズバー「DUG」を開店。同店は作家デビュー前の村上春樹さんらが通ったことで知られています。
CREAでは、2017年「本と音楽とコーヒー」特集をはじめ、ご取材にご協力いただきました。編集部一同、心より、中平さんのご冥福をお祈り申し上げます。
当時のインタビューがきっかけで、中平さんと交友を深めたカフェ愛好家のヴォーン・アリソンさんより、メッセージをいただきました。
After living in Japan for 20 years and exploring all the coffeehouses, Nakadaira san, legendary soul behind DUG, will always hold a special place in many many hearts. This place is not just a coffee shop and bar; it’s nothing short of a cultural icon of Tokyo. Nakadaira-san’s photography will live on forever - and let’s all hope DUG is always still here, mercifully unchanged, magnificent as ever.
Rest in Peace, Nakadaira-san.
And people! While alive in Tokyo, have a drink at DUG.
――Vaughan Allison
20年間日本に住み、あらゆる喫茶店を来訪してきた私にとって、そして多くの人にとって、DUGの伝説的な魂、中平さんの存在は心の中に特別な場所を占めています。ここは単なる喫茶店やバーではなく、東京の文化的アイコンにほかなりません。中平さんの写真は永遠に生き続けることでしょう。そして、DUGがいつまでも変わることなく、素晴らしい存在であり続けることを皆で祈りましょう。
中平さん、安らかに眠ってください。
そして皆さん! 東京で生きているうちに、ぜひDUGで一杯楽しんで。
――ヴォーン・アリソン
故人を偲び、当時の記事を以下に公開させていただきます(記事の情報は当時のものです)。
メルボルン出身で、日本のコーヒー文化を愛する話題のコーヒーブロガー・ヴォーンさん。「音楽が最高!」と足繋く通う、最愛カフェの2人のオーナーに会いに行きました。
ジャズ喫茶という
日本の文化を知りたくて
◆Jazz Cafe & Bar DUG(ダグ)
新宿の喧騒を払い除けるように地下へ潜ると現れる、ほの暗い琥珀色の空間。ここに時々通っては、ひとりレコードから流れるジャズに耳傾け、しっぽりコーヒータイムに耽るヴォーンさん。
欧米でジャズといえば夜、お酒を飲みながらライブを観る、クラブやバーが主流。静かにジャズとコーヒーを楽しむ風景は、日本ならではの文化だという。
「店ができた1960年代は、都内に20軒くらいあったと思います」と教えてくれたのは「DUG」オーナーの中平穂積さん。まさにジャズ喫茶が日本を席巻した頃だ。
「当時はまだレコードが高価で給料の半分くらいの値段でしたし、木造の家では大きな音で聴けない。そこでみんな、ジャズ喫茶に集まったわけです」と話す隣で頰を紅潮させて聞くヴォーンさん。
そう、彼にとってジャズ喫茶を営み、写真家として多くのミュージシャンを撮影してきた中平さんは、神様のような存在。
2024.12.07(土)
Text=Mitsuharu Yamamura
Photographs=Wataru Sato