第3話「オポチュニティの轍」
佳純が火星探査車・オポチュニティについて屋上で話す場面
起立性調節障害を抱えて、保健室登校を続けるSF小説好きの1年生・名取佳純を描いた第3話「オポチュニティの轍」は、もともと原作でも人気の高い話です。
ただ原作では、藤竹と佳純がオポチュニティについて話す場面は物理準備室になっていますが、ドラマでは高校の屋上になっています。そのことで火星には今も動かなくなったオポチュニティがいることを想起させられるので、さらにいいと感じました。
佳純 「……寂しいだろうな」
藤竹 「そうですか? 僕はそうは思わないです」
その後、藤竹の説明によって孤独の象徴だと考えていた、壊れた探査車の見方を佳純は変えることになります。ものの見方が考え方によって変わってくる――小説では地の文で書かれていることが、ドラマでもさらに細やかに描かれています。
第4話「金の卵の衝突実験」
教室のうるさいじじいだった長嶺が過去を独白する場面
青年時代、高校に通えず働くしかなかった70代の長嶺は、名優・イッセー尾形さんが演じています。
その過去を教室で話す独り芝居には、ただただ圧倒されました。怒りがベースにあるわけですけれど、その怒りの表し方は誰にも真似のできないものだと思います。
長嶺 「若い頃私を動かしていた怒りはね、外に向かってた。今は、自分に向かってます。許せない、自分が。なぜ私じゃなく、妻なんだ!」
年齢とバックグラウンドの違いで、激しく対立していた長嶺と岳人は、これ以降、だんだん歩み寄っていきます。
経営していた町工場で、長嶺が岳人に「飯、食うか?」と誘う場面(第7話「浮遊惑星のランデブー」)もジーンと来てお勧めです。
2024.12.03(火)
文=文藝春秋出版部
写真提供=NHK