第6話「コンピューター室の火星」

コンピューター部部長の要と弟の子供時代の回想場面

 これもドラマのオリジナルの部分です。全日制の生徒でコンピューター部部長の要は、弟が家庭内で暴れたことで、高校受験に失敗。家でプログラミングすることもままならず、弟の衛に憎しみさえ感じています。

 そんなときに小学校の頃、自分が弟にプレゼントした自作のゲーム機を発見し、当時のふたりの関係を思い出すんですね。

衛 「――これ、兄ちゃん作ったの?」
要 「そうだよ」
衛 「……すげえ。兄ちゃんかっこいい」

 兄を尊敬する弟と、弟を可愛がっている兄……自分の子供たちを見ていると、喧嘩ばかりしてそんなことは全然ないんですが(笑)、その後、壊れてしまったそのゲームを直して、弟の引き籠もっている部屋の前にそっと置く。

 弟を理解しようとしはじめた要の姿に胸が熱くなりました。

第7話「浮遊惑星のランデブー」

大学院時代に藤竹の依頼で、同期の相澤が模型を作る場面

 人間の頭と身体って直結していて、ものを作ることによるリフレッシュの効果って絶対にあると思っているんです。

 ふたりの恩師の伊之瀬先生の口癖も「手を動かす」ですし、実際、僕もコンピューターの前でデータ処理ばかりしていて疲れ切ったとき、野外に出て岩石を採ったり地層を測ったりすると、頭がスッキリして思考が深まるのをよく感じていました。

藤竹 「作ってくれよ、そういうの得意だろ?」
相澤 「そんなヒマないんだよ。自分でやれ」
藤竹 「俺はそんな器用じゃないよ」
相澤 「は?」
藤竹 「データばっかり睨んでないで、手を動かせ!」

 僕も大学院時代は、それこそ「院生部屋」に1年中いたんですが、そこには先生は滅多に来なくて、先輩や同期といろんな話をしながら濃密な長い時間を過ごしました。

 現在はJAXAで大きなプロジェクトを任されている相澤が、昔完成させた探査機の模型を今も自分の研究室に飾っていて、それを眺める場面もすごく意味深ですよね。

 さて、本インタビューの時点で伊与原さんがドラマ『宙わたる教室』を視聴したのは第8話「メテオライトの憂鬱」まで。第9話、第10話で、さらに原作者や視聴者を泣かせる名場面が繰り広げられることを大いに期待したい!

『宙わたる教室』

放送中:2024年10月8日(火)スタート〈全10回〉
総合テレビ 毎週火曜 夜10:00~10:45
BSP4K 毎週火曜 午後6:15~7:00
[再放送] 総合テレビ 毎週金曜 午前0:35~1:20 ※木曜深夜
配信中:Amazon Prime Video(最新話はNHK放送の翌週水曜0:00に公開)
原作:伊与原新 『宙わたる教室』
脚本:澤井香織
音楽:jizue
主題歌:Little Glee Monster「Break out of your bubble」

出演:窪田正孝  小林虎之介 伊東蒼 ガウ
田中哲司 木村文乃/中村蒼  イッセー尾形 ほか

2024.12.03(火)
文=文藝春秋出版部
写真提供=NHK