私は「痩せたね」と言われることでモチベーションが上がり、食事にもそれまで以上に気をつけるようになりました。その結果、1年後には体重が10キロ減っていたのです。さらに、平常時の最大血圧も、105程度から130程度まで下がりました。

 実は「ゆるジャンプ」は、血管力向上に効果的な要素がいくつも含まれているトレーニングです。

 ジャンプを繰り返すと、筋肉の収縮とともに動脈に刺激が伝わり、一酸化窒素(NO)が産生されます。NOは大動脈のくだりでお話ししたように血管拡張物質で、血流をよくします。毛細血管にも酸素や栄養が運ばれるようになりますし、高血圧の場合は血圧を下げてくれるのです。

 ウォーキングのような有酸素運動にも同様の効果がありますが、「ゆるジャンプ」はとりわけ“第二の心臓”とも呼ばれるふくらはぎの筋肉を強く収縮させるという点でも効果的です。ふくらはぎの筋肉が収縮すると、中を通っている血管が圧迫されて、心臓へと戻る静脈血がまるで牛の乳搾りのように押し上げられます。そのことでも全身の血液循環がよくなり、血圧が安定します。

 さらに、「ゆるジャンプ」は有酸素運動でありながら、下半身の筋肉に負荷をかける筋トレとしての要素があります。

 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンスの研究によると、有酸素運動と筋力運動のどちらかを単独で行うより、両方のタイプを組み合わせて行うほうが、最大血圧の降圧効果が大きくなるといいます。ゆるジャンプはまさに両者を組み合わせた運動なのです。

 以上の理由から私は「ゆるジャンプ」を血管力向上に理想的な運動として提唱したのですが、昨年、さらにその有効性を裏付けるような論文が発表されました。

 国立障害者リハビリテーションセンターや国立循環器病研究センター、東京大学などの研究グループが、「頭の上下動による脳への物理的刺激」が高血圧改善をもたらすことを世界で初めて明らかにしたのです。

2024.10.25(金)
文=伊賀瀬道也