〈「最近でもすごく落ち込むので(笑)。自信なんてないです」大ブレイクした奈緒(29)が「転機だった」と振り返る“あの名作”〉から続く
NHK朝の連続テレビ小説『半分、青い。』で注目されて以来、話題作に出演し続ける奈緒。最新主演映画『傲慢と善良』でも確かな演技力で観客を魅了する人気女優に、演技への向き合い方、そして作品選びについて尋ねた。(全2回の後編/前編を読む)
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奈緒の築いてきた、演技のスタイル
――奈緒さんは『半分、青い。』の後、数々の映画やドラマに助演して、印象深い演技を披露してきました。決して大げさではなく、どちらかというと抑制的で、細やかに心の機微を表現する、その演技のスタイルはどうやって築かれてきたものですか?
奈緒 そうやって言っていただいて、あらためて自分を振りかえってみると、私はこの仕事を始めたときからけっこう不安症なんです。それは先ほどお話しした自信のなさでもあるんですけど、役柄の中身や背景を自分のなかで埋めていかないとすごく不安なんですね。ひとりの人物を理解するのって、自分の人生経験では到底できないことだと思っているので。
だから現場に入る前の段階でしっかりと準備をします。こうすればこう見えるかなとか、こういうふうに見せたいなとか、いわゆるプランみたいなものを私はあまりたくさん持っていません。準備の段階で埋められるところを埋めておいて、現場に入ったら、あとはもう監督を信じてお芝居をする。もし私が埋めていった人物の中身が、みなさんに伝わったのだとすれば、それは監督がその瞬間を切り取ってくださったからなんだと思います。
演技に窮屈さを感じないのはなぜか?
――たしかに役柄の隙間をそうやって埋めているんでしょうけど、実際に目にする演技はとても素直で、事前に構築したという窮屈さをまったく感じません。きっとその場で心が動くままに演技をされているんだろうなって。
奈緒 そうですね、現場ではなるべく自由でありたいなと思っています。選択肢がたくさんあることもひとつの自由ではあると思いますけど、選択肢がありすぎると自分は選べなくなる性格なので、核となる部分だけちゃんと埋めておけば、あとは現場で起きることに自由に反応できるんじゃないかって。そのために埋めていくみたいなところはありますね。
2024.10.21(月)
文=門間雄介