この記事の連載

「より新しいこと、より良いことをしたい」

――クァク・ドンヨンさんは、コメディの演技にも定評がありますが、そういうところにも自由度は関係していそうですね。

 多くの俳優が口を揃えて言うことなんですが、“コメディはとても難しい”し、だからこそ挑戦したいジャンルなんです。私にとっても難しいことですし、挑戦したいことなんですけど、コメディに対しての愛情もあります。子どもの頃からコミカルなものが好きだったし、そういう感覚を生かして、場面作りに役立てたいと思っています。

 そして、その試みが成功して、笑ってもらえたときは、とてもうれしいです。でも、人によって、何が面白いかっていう感覚って違うんですよね。だから、大多数の人の「面白い」という感覚に合わせることは、非常に難しいことだと思います。でも、その難しさを乗り越えて、誰かを笑わせることに成功したときの喜びはひとしおなんです。

――コミカルな作品や人で注目しているものはありますか?

 コメディ映画は、たくさん見ます。特にジョーダン・ピールの関わった作品なんかはよく見ますね。

――ジョーダン・ピールというと、『ゲット・アウト』(17年)や『NOPE/ノープ』(22年)など、怖い映画のイメージも強いですね。

 彼は、もともとコメディアンだったので、コミカルな作品にも出ていたんです。映画などを見てコメディを学ぶこともありますが、日常生活のいろんな場面でも、面白かったこと、楽しかったことなんかはキャッチして、自分の記憶の中にストックしておき、いざとなったら使おうと思っています。

――俳優になって、もっともハードルの高さを感じることはなんですか?

 いろんな作品ごとに感じますし、いろんな役作りをするごとに感じるんですけれども、自分の経験に頼って同じことを繰り返すということは避けたいといつも思っています。より新しいこと、より良いことをしたいと常に思っています。ですから、役作りをするときに、自分がこれまでやってきたことを踏襲しないようにしようと努めています。

2024.09.15(日)
文=西森路代
撮影=三宅史郎