この記事の連載

 今年6月、台湾の「裸で入れる湯」を詳細にレポートしたコミックエッセイ『台湾はだか湯めぐり 北部篇』(中央公論新社)を刊行した台湾出身の漫画家・捲猫(マキネコ)さん。前篇・中篇に続き、後篇では漫画家を目指したきっかけや日本の温泉について語っていただきました。


大好きだったマンガは『シティーハンター』(北条司)

――本を読んでいると捲猫さんの人物像にも興味が湧いてきます。漫画家になった経緯を教えてください。

 子どもの頃から絵を描くのが好きで、台湾で翻訳されていた日本のマンガをよく読んでいました。特にギャグマンガや笑えるマンガが好きで、その影響で人間観察が趣味になって、行動や会話からおもしろいことを見つけ出し、それを絵と言葉で伝えることがしたくて漫画家を志しました。

 ちなみに、大好きだったマンガは『シティーハンター』(北条司)です。当時9歳ぐらいだったので、今思うと子どもには不適切だったかも知れませんが、私の中ではただ単に、冴羽獠が槇村香に100トンハンマーで殴られるというシーンがおもしろくて大好きでした。

――大学時代はマーケティングを学んでいたそうですね。

 はい。台湾の大学では広告学科で主にマーケティングを学んでいたので、マンガとはまったく無縁の生活でした。卒業して働き始めてからは、小・中学校の教材で使うフラッシュ動画などを作るデザイン系の仕事をしていましたが、“自分で創作したい”という思いが強くなり、イラストレーションを学ぶためイギリスの大学院へ。卒業後は台湾に戻って創作活動を始めて、自分のオリジナルで作品を描くようになりました。

――昔から日本の文化に興味がある捲猫さんから見た、日本の温泉のいいところを教えてください。

 日本は温泉文化が長く、湯屋の建築や浴室のデザインが素敵なところが多い点がとてもすばらしいですね。露天風呂がある施設も多く、湯船から風景がよく見えたり、それぞれ個性があるので、温泉を目的にした旅ができるのが魅力です。

2024.09.04(水)
文=田辺千菊(Choki!)
写真=石川啓次