圧倒的な不気味オーラ
ビジュアルがそうなっているから、もありますが、湖のほとりにたたずんでいるときや、子ども時代の花音(有香)に万引きを教えているときも、表情がほとんど変わらない、抑揚のない話し方で何を考えているのかまったくわからない、体温が低そうな感じがさすがの演技。ご本人も公式HPで、「どういう人物像なのかが非常に謎めいています」とコメントしています。
そもそも灰川は、子どもたちを強制的に連れ去ったのではなく、親から虐待を受けていた子どもを連れてきていた、つまり救済しようとしていたようなのですが、その目的は今のところ不明。
“謎の男”というキャラクターは、ミステリーや刑事ものではよく出てくると思いますが、その“謎っぷり”をここまで見事に体現できることって、なかなか少ないと思います。
最近は、ドラマの公式SNSで、撮影中のオフショットが公開されるのが当たり前となり、キャストたちのNGシーンや、ふざけたりリラックスしている写真や動画を見られることが増えました。
ですがこのドラマの公式SNSでは、小日向さんのそういったオフショットは今のところ皆無。あるのはドラマ内の場面写真だけです。
灰川のミステリアスさを終盤まで維持するためには、それは正解だと思います。なぜなら、小日向さんの人懐っこい笑顔は、灰川とはあまりにも真逆だからです。
小日向文世さんは舞台、ドラマ、映画ですでに膨大な数の作品に出演していて、演じたキャラクターの幅もあまりにも広いのですが、番組でご本人が話すところなどを見たことがある人は、明るい、可愛らしいという印象を持っている人もいると思います。
ですが怖い役、嫌な役のときの彼の放つ不気味オーラは他を圧倒するものがあります。
2024.08.25(日)
文=斎藤真知子