著者ルミネの生まれ育ちは、ゴッホが「ローヌ川の星月夜」などの名作を生んだ時期に滞在していたのと同じプロヴァンス地方である。そのため、同じ風景に共感する著者ならではの感覚と、ゴッホへの深い敬愛から生まれたのが本書といえるだろう。星や月といった夜の風景への強い思いは、ゴッホという天才をして、これだけの芸術へと昇華させ、そして自らもエネルギーを使い果たし、空に帰って行ったことを深く納得させるものだが、ゴッホと同じく37歳で夭折した宮沢賢治に相通じるところがあると感じるのは私だけだろうか。
Jean-Pierre Luminet/1951年フランス生まれ。天体物理学者、小説家、詩人。専門はブラックホールおよび宇宙論。マルセイユ天文物理学研究所所属、フランス国立科学研究センター研究名誉部長。天文学のほか、音楽や芸術についての著作も数多い。
わたなべじゅんいち/1960年福島県生まれ。天文学者、理学博士。国立天文台上席教授。『賢治と「星」を見る』など著書多数。
ゴッホが見た星月夜 天文学者が解き明かす名画に残された謎
定価 2,750円(税込)
日経ナショナル ジオグラフィック
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2024.05.25(土)
文=渡部潤一