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実力で運をつかんできた俳優3人の「演技論」

坂東 でも清水くんは演技が自然すぎてさ、「体が動いてる」って指摘されていたよね。今もさ、話しながら体が動いてるでしょ? つまり、感じたことを本当に素直に表現する役者さんなんだよね。嘘をつかない、ナチュラルな人だなって。

髙橋 板東は寡黙な役だけど、その中で心の静かな動きも表現できていると思った。最初はずっとボケっとしていて、カカシが台詞を言ってるみたいだった。そういう役なので。でも父親の話題になったときの、クッ、という入り方がいい具合だった。「あ、入った!」とわかると、こっちも楽しくなれたし。

清水 坂東は今回、大体が受けの芝居だったよね。

坂東 基本的にこの2人と一緒にいる場面は全部受けでしたね。お芝居をしていると、「これやりたい、あれやりたい」といろいろ思いつく脳みそになっちゃってるから、今回は本当に苦しかったです。「落ち着け落ち着け」と自分に言い聞かせて……。思いついたら一応パッと監督の顔を見て、「……これいらないな」と判断する日々でした(笑)。

清水 本番を2回、3回繰り返すと、小さな振れ幅がどんどん大きくなって、みんなの芝居が変わったりするじゃない? 坂東はそういうのも全部ちゃんと受けて芝居を変えていくから、すごく上手だなと思った。

髙橋 確かに丁寧だった。

坂東 里恩の芝居は、台詞回しや口の動きが上品。現場ではあんまり感じなかったけど、試写で見たときに「聡明なヤクザだな」と(笑)。

清水 インテリヤクザ(笑)。

坂東 口でも絶対勝てないし、多分腕力でも英治には勝てない。

清水 ずっと球(台詞)を投げ続ける役で、(会話の)肩が強い。僕にはできないなと思いました。

坂東 唯一無二と言ったらいいんですかね。あの英治は里恩にしか絶対にできない。あれをやれと言われても絶対無理です。代わりがいない。

――英治は「世直し」と称して、通りすがりの他人に因縁をつけて、理詰めで淀みなく攻撃していきます。あの言葉を投げ続けるお芝居は強烈でした。

髙橋 すごく楽しかったです。

坂東 めっちゃイキイキしてました。水を得た魚のように。

髙橋 この作品を撮れるのがまず嬉しかったから、毎日楽しかった。

坂東 だいぶ前から高い熱量でポッポポッポしていたよね。撮影が始まる2ヶ月前ぐらいにはもう、英治のあの大量の台詞が全部入ってた。

――英治がシーンのリズムを作る役割でしたね。

髙橋 監督にもそう言われていました。リズムだけじゃなく、台詞の抑揚や間、目や指の動きもいろいろ試すことができて、全部楽しめました。

坂東 確かに現場でもいろいろ細かく試していたし、画にそれが出ていた。あれだけ人物に寄ったショットを長回しでスクリーンに映されると、途中で飽きてしまうこともあるけれど、英治には一切飽きなかったな。

» 【つづきを読む】「演技で肌の色を変えたらしい」「すげえ~‼」3人が語る、理想の俳優は?

坂東龍汰(ばんどう・りょうた)

1997年、北海道出身。2017年デビュー。『フタリノセカイ』(飯塚花笑監督、22)で映画初主演を務め、第32回日本映画批評家大賞の新人男優賞(南俊子賞)を受賞。主な出演作に映画『春に散る』(瀬々敬久監督、23)、『バカ塗りの娘』(鶴岡慧子監督、23)、映画『一月の声に歓びを刻め』(三島有紀子監督、24)、舞台「三人姉妹はホントにモスクワに行きたがっているのか?」(岩松了作・演出)、「う蝕」(横山拓也・作、瀬戸山美咲・演出)などがある。現在、4月期ドラマ「366日」(CX)、「RoOT / ルート」(TX)に出演中。『君の忘れ方』(作道雄監督、25)の公開を控えている。


髙橋里恩(たかはし・りおん)

1997年、東京都出身。2016年デビュー。主な出演作に『恋い焦がれ歌え』(熊坂出監督、22)、『ファミリア familia』(成島出監督、23)、『映画 ネメシス ⻩金螺旋の謎』(入江悠監督、23)、『東京リベンジャーズ 2 血のハロウィン編-運命-』(英勉監督、23)、『誰が為に花は咲く』(藤原知之監督、24)、舞台「世界が消えないように」(タカイアキフミ作・演出)、ドラマ「家政夫のミタゾノ」(EX)などがある。『陰陽師 0』(佐藤嗣麻子監督)が公開中。


清水尚弥(しみず・なおや)

1995年、東京都出身。2015年『死んだ目をした少年』(加納隼監督)で主演を務める。主な出演作に『ソ満国 15歳の夏』(松島哲也監督、15)、『人狼 ゲーム プリズンブレイク』(綾部真弥監督、16)、『ある女工記』(児玉公広監督、16)、『ちはやふる-上の句-』(小泉徳宏監督、16)、舞台「惡の華」(加藤拓也演出、16)、「犇犇」(タカイアキフミ作・演出、21)、ドラマ『刑事7人』(EX)、『GARO -VERSUS ROAD』(TOKYO MX)などがある。主演を務めた短編映画『竹とタケノコ』(川上信也監督)が2024年春公開を控えている。

『若武者』

出演 坂東龍汰/髙橋里恩/清水尚弥
木越明/冴木柚葉/大友律/坂口征夫/宮下今日子
純乃あみ/土屋陽翔/新名基浩/小林リュージュ/須森隆文/島津志織/大河内健太郎/五頭岳夫
矢野陽子/矢島康美/鶴田翔/秋田ようこ
木野花/豊原功補/岩松了

監督・脚本:二ノ宮隆太郎
エグゼクティブ・プロデューサー:堤 天心 関 友彦/プロデューサー:鈴木徳至
製作:コギトワークス U-NEXT/制作プロダクション・配給:コギトワークス
Presented by New Counter Films
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次の話を読む「演技で肌の色を変えてみたい」いま目が離せない“若武者”3人の野望 坂東龍汰×髙橋里恩×清水尚弥

2024.05.25(土)
文=須永貴子
撮影=榎本麻美