この記事の連載

五感を大切に、ブラインドチェックは欠かさない

――これまで、ご自身がお菓子づくりで大切にしていることはなんですか?

 まずは目で見て、「食べたいな」と強く思っていただけるものをつくること。味覚的には、私自身はシンプルで、味わいをストレートに感じられるものが好きです。そして、そこに加わるさまざまなテクスチャーも大切。そのバランスと調和を追求し、最高の食材を選ばなければ、最高の味を楽しんでいただくことはできないとも思っています。お菓子をつくるときにいつも頭に叩き込んでいるのは、「これをつくるのは、お客様に喜んでいただくためだ」ということ。

 いろいろな年齢や環境のお客様に召し上がっていただくことも念頭に、チームのスタッフとともに必ず、ブラインドで試食してみます。ときには新作のお菓子を家に持ち帰って、こっそり部屋に置いておくことも。しばらく経ってそれがなくなっていたら、おいしかったということ。万が一残っていたとしたら、そのお菓子はおいしくなかったということです。だから、試してみるんです。私の娘は7歳ですが、はっきり意見を言いますよ。

――最近のお菓子の傾向と、心がけていることは?

 時代と共にパティスリーの世界は変化していて、特に味覚の部分の変化を強く感じます。テクスチャーはより軽やかに、糖分や脂肪分はなるべく抑えて、パティスリーの構成に対するアプローチがよりヘルシーでピュアなものとなるようにしています。

 季節を大切にすることはもちろん、エシカルな食材の調達もこだわりたい。喜びと美食が私たちのキーワードであることに変わりはありませんが、時代の流れやお客様の要望に対してよりオープンに向き合い、期待に応えていきたいと思っています。

――最後に日本のファンへ、メッセージをお願いします。

 ラデュレを愛してくださるみなさま、本当にありがとうございます。

 13年前に初めて訪れて以来、私にとって日本は大好きな国のひとつです。すべてが非常に規則正しく整っていて、人々がお互いを尊重し合っていることが心に響きました。

 そして、東京のような大都会であっても静けさや落ち着きがあることも、大きな魅力です。安全でもありますしね。食も非常に高いレベルにあり、素晴らしいものやガストロノミーに対する人々の関心も高いと感じます。そういった日本のみなさんにラデュレを愛していただいていることを、とてもうれしく思います。

 ラデュレには世界中のさまざまな国のシェフたちが参加しており、たくさんの国にラデュレのお店があります。内緒ですが、そのなかでも私はラデュレ・ジャパンが大好きなんです。みなさまの期待に必ず応えられるよう、毎日努めていきますので、ぜひ、新しくオープンした日比谷店をはじめラデュレのお店に足をお運びください。お待ちしています。

Julien Alvarez(ジュリアン・アルバレス)

1984年、フランス南西部ベルジュラック生まれ。父はスペイン人、母はフランス人。ベルジュラックのパティスリーやスペイン・バルセロナ「ブボ」で経験を積み、パリへ。「パティスリー・デ・レーヴ」に務めた後、製菓学校「ベルエ・コンセイユ」で教鞭を取る。2011年、スペイン代表チームの一員として、パティスリーのワールドカップ「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」で優勝。ホテル「ザ・ペニンシュラ・パリ」、「カフェ・プーシキン」、ホテル「ル・ブリストル」でシェフ・パティシエとして華々しく活躍し、2021年7月、メゾン・ラデュレのシェフ・パティシエに就任。

ラデュレ 日比谷店

所在地 東京都千代田区有楽町1-2-2 日比谷シャンテ1F
電話番号 03-4335-4202
営業時間 11:00~21:00 (サロンL.O. 20:00)
定休日 不定休
https://www.laduree.jp/

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2024.05.16(木)
文=瀬戸理恵子
写真=志水隆