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最近の読書量は?

――杏さんといえば無類の本好きとして知られていますが、最近でもかなりの読書量ですか?

 あー、それはすごく減りました~! やっぱり心に隙間がないと入れられなくて。

――子育てとお仕事が重なると、時間的にも気持ち的にも余裕がなくなりますよね。

 そうですね、最近どうしても隙間が大きくとれないような感じはありますね。選ぶ本も軽いストーリーのものが多くなりました。重めのもの、ちょっと昔の難しい文体もなかなか読めなくなって、古い版の文庫本とか、カバーがかかったままになっていることも(笑)。

――『かくしごと』では、子どもへの虐待や親の認知症など、さまざまな社会問題について考えさせられました。杏さんご自身は、こういった問題について意識されている部分はありますか?

 大人になって年月を重ねるにつれ、子どもが巻き込まれる虐待や傷害事件の報道などを見て、怒りや悲しみを覚えることがどんどん増えてきています。ただ、個別の事件の裏には、社会制度や構造の問題があるとも感じます。それでも、自分も含め、子育て中の世代って、忙しさもあってなかなか声を上げる気力も余裕もないという面があるんです。

――確かに、目の前の子育てでせいいっぱいで、それどころじゃないというところはありますよね。

 そうこうしているうちにどんどん子どもが大きくなって辛い時期を卒業し、その場の問題からも脱却していく。そしてまた次の新しい世代が大変なフェーズに直面していくというように、ベルトコンベアのように時間と共に状況が変わっていくので、親が抱える問題ってなかなか見えづらいというか、可視化しづらいんじゃないかと思うこともあります。

 だからこそ、今感じていることは忘れないでいたいし、チャンスがあったり必要だと思ったりしたら臆さず声を上げたい。何より、考え続けるということ自体がすごく難しくて、だからこそやらなければならないし、そのためにも情報をキャッチしていくことが大事だとも思います。

──千紗子は目の前の少年を救うために「あなたは私の子どもなの」と大きな嘘をつき、かくまいます。

 自分だったらどうするかっていう確たる答えはもはや出ないんですけど、千紗子は普通ならなかなかできないことを行動に移して、束の間かもしれないけれども、本当の幸せを体現するために、社会からは隔絶された自分の空間を作り上げる。もし私が同じ状況になっても同じようにできるか分からないなと感じました。

 誰でも、いろんな事件が実際に起こった後の情報を聞いて、私がもしそこにいたら何かしてあげたかったなって思った経験がありますよね。じゃあ本当に目の前でそれが起こって、自分が何かできるってなったら、あなたはどうしますか、と。そういうことをすごく考えさせられる作品だと思います。

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杏(あん)

1986年生まれ。2001年にモデルとしてデビューし、2005年からはニューヨークやパリ、東京などの主要ファッションショーで活躍。2007年に女優デビュー。NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」やドラマ「花咲舞が黙ってない」シリーズなどで主演を務めるほか、『キングダム 運命の炎』『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』など数々の映画やドラマに出演している。

映画『かくしごと』

公開:2024年6月7日(金)TOHOシネマズ 日比谷、テアトル新宿他全国ロードショー
コピーライト:©2024「かくしごと」製作委員会
配給:ハピネットファントム・スタジオ
杏 中須翔真 佐津川愛美 / 安藤政信 奥田瑛二 ほか
https://happinet-phantom.com/kakushigoto/index.html

衣装

シャツ 269,500円、スカート 294,800円
Bottega Veneta/Bottega Veneta Japan(0120-60-1966)

ピアス K18RG,MALACHITE,WHITE DIAMONDS  473,000円
ブレスレット K18RG,1 MALACHITE,1 WHITE MOTHER OF PEARL,WHITE DIAMONDS  341,000円
POMELLATO/ポメラート クライアントサービス(0120-926-035)

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2024.06.07(金)
文=張替裕子(Giraffe)
撮影=橋本 篤
スタイリスト=中井綾子(crêpe)
ヘアメイク=犬木愛(AGEE)