この記事の連載

 後篇では、「ご近所ガイドOMOレンジャー」による早朝に浅草寺の境内を巡るガイドツアーや、浅草の娯楽を代表する落語を間近で体験できるイベントについてご紹介。泊まったからこそ体験できる新発見など、その魅力をCREAライターの鈴木希がレポートします。


OMOレンジャーの案内で巡る、早朝の浅草さんぽ

 「浅草の街の人々は、“江戸っ子”の気風を持ちながらも、さらに限定して“浅草っ子”とも呼ばれます」とOMOレンジャー。「粋だねぇ、明けの浅草さんぽ」は観光客で賑わう日中ではなく、そんな“浅草っ子”の時間が流れる早朝に浅草寺の境内を巡るガイドツアーです。

 早朝5時55分、通常はルーフトップテラスに集合のところ、あいにくの雨天のため13階のOMOベースに集合。しばらくすると、現在も毎朝6時に撞かれる浅草寺の「時の鐘」が聞こえてきます。

 この「時の鐘」は江戸の人々に時間を知らせるため、5代将軍徳川綱吉の命で鋳造されたものなのだそう。松尾芭蕉の句にも登場しており、芭蕉も聞いたであろう同じ鐘の音だと思うと、タイムスリップしたような感覚に。静謐の朝に響く鐘の音が心を落ち着かせてくれました。

 まず、境内の端にある神社、浅草神社へ。何度も浅草寺に来たことはありましたが、浅草神社を訪れるのは初めて。「そういう方は多くいらっしゃいます」と話すOMOレンジャーによると、浅草神社は浅草寺の創建に関わる三社様が祀られているため、浅草っ子の中には浅草寺の本堂と同じぐらい大事にしている人もいるのだとか。

 毎年5月に行われ、3日間で約180万人が集まる三社祭は、浅草神社の例大祭のこと。三社祭が行われる3日間、浅草っ子たちは自分の仕事を休み、全力で祭りに参加するというエピソードに、さっそく粋を感じました。

 続いて向かった本堂の前には、朝座が始まる6時30分(秋冬季)をめざして地元の人たちが集まってきていました。「おはよう、今日は早いね」という会話が聞こえてきたり、掃除をしている女性がいたり、犬の散歩をしている人がいたり、地元の人たちが毎朝の習慣として早朝の浅草寺に訪れていることを実感。

 さらに「浅草っ子との日々の会話の中で『浅草には観音様がいる』というフレーズをよく耳にし、浅草寺は地元の人たちの心の支えなんだなと感じています」とOMOレンジャーから聞いて、浅草寺と浅草っ子の深いつながりに感動しました。

2024.04.18(木)
文=鈴木 希
撮影=榎本麻美