週末の旅は本屋さん、神奈川シリーズ(厚木、平塚、川崎、横浜)に続いて、千葉方面を開拓しようと書店員ネットワークをたどって、山下書店南行徳店に楽しい書店員さんがいると聞いて、東京メトロ東西線で南行徳にやってきた。

 現在は市川市に合併されているが、行徳、南行徳は古い町だ。江戸時代からの漁師町で、今でも海苔の養殖やアサリの漁が行われている。東京へ通う会社員も多いベッドタウンの住宅街で、一見漁師町の面影はないものの、山下書店のお隣は古くからの海苔店(外部サイト)で、沖合の三番瀬で養殖される海苔も扱っているとのこと。

 海苔店のおかみさんに勧められて、市川野鳥の楽園(外部サイト)に足を伸ばしてみた。宮内庁の鴨場と合わせて83ヘクタールに及ぶ干潟地帯で、ほとんど自然のままの湿原が残されている。取材当日はみぞれ降る中だったが、野鳥観察舎からのカモメ舞い飛ぶ光景は、遠い世界に旅に来た気分にさせられた。

行徳野鳥観察舎からの雄大な風景。

 山下書店は、千葉と東京に10店舗ほど展開する中堅チェーン書店。歌舞伎座近くの東銀座店(歌舞伎や宝塚など演劇に強い)や、空港の中の羽田店(旅の本や機内で読む文庫が強い)は、特徴的な品揃えで知られるが、南行徳店は、東京近郊ベッドタウンの駅前、ごく普通の本屋さんだ。アルバイトの高橋佐和子さんによると、お客様は、平日昼間はご近所のお年寄りやベビーカーを押す方、夕方以降は通勤通学の方と客層が変わる、典型的な都市近郊住宅地の立地と言える。

山下書店南行徳店。入り口に立つ『進撃の巨人』のスタンド型広告はメッセージボードになっている。

 品揃えは、雑誌、コミック、文庫が中心、小さなお店だが児童書や文芸書もしっかり置いている。高橋さんは、「特に担当があるわけではなくて、入荷してきたものを並べるだけ」というが、以前大手書店で勤務していた経験と熱意を買われて、児童書売り場と文庫の棚は主に高橋さんが陳列を任されている。文庫本は、『ビブリア古書堂』シリーズやドラマ化で人気の『半沢直樹』シリーズ、『下町ロケット』などの売れ筋を外さず、POPや同じ著者の既刊本も含めて、丁寧に並べている。

文庫売り場。
児童書売り場。

 児童書も大きなスペースではないが、ロングセラーものと、季節もの(取材時は節分前で、鬼の絵本を陳列)、知育系、新作と、バランスのよい売り場。一見、まあまあ普通の売り場のように見えるのだけど、高橋さんならではの工夫が込められている。

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2014.03.01(土)
文・撮影=小寺律