素晴らしい空間で美しい街並みを一望しながら、美味に舌鼓。
食とアートの都ならではの感動を体験できる最新レストランを4回に渡りご紹介。
大河のように流れる歴史、珠玉の瞬間をいち早く味わう
◆La Tour d'Argent(ラ・トゥール・ダルジャン)

2024年12月の再開に向けて修復工事が急ピッチで進むノートルダム大聖堂。文字通り刻々と姿を変えてゆく歴史的プロジェクトの様子を見るのに、これほど素晴らしいロケーションはない。

1582年からの伝統をもつ「ラ・トゥール・ダルジャン」は、昭和天皇も訪れるなど世界の王侯貴族、富豪と食通たちを何世紀にもわたって迎え入れ、まさにパリのガストロノミーの歴史を凝縮した存在だ。
それが2023年夏、チャレンジングな大改装を経て生まれ変わっている。

大聖堂が手にとるように眺められるレストランフロアは最大限にパノラマを享受できるようにグレードアップされ、全面の大きな窓ガラスに加えてセーヌの流れと呼応するようなシルバーの天井にも風景が映る。

さらにオープンキッチンになったことで、料理人たちの動きがもうひとつのスペクタクルに。窓の外も内も、すべての要素が極上の“美食シアター”として演出に一役買っている。

2019年からこの名店の厨房を率いるのはヤニック・フランク氏。巨匠たちの薫陶を受け、MOF(国家最優秀職人章)も受章。名だたる高級店でキャリアを積み上げてきたフランスガストロノミーの王道を歩み続ける人物だ。

さて、ラ・トゥール・ダルジャンといえば、鴨料理を思い浮かべる方も多いと思う。フランク氏はその伝統を受け継ぎつつ、今のパリの空気感をまとわせ洗練された美しさでそれを皿の上にのせる。
つまり、眺望にも料理にも、フランスが誇る“パトリモワンヌ(歴史遺産)”の最新形としてここにあるのだ。

La Tour d'Argent(ラ・トゥール・ダルジャン)
所在地 15 quai de la Tournelle 75005 Paris
電話番号 01 43 54 23 31
営業時間 12:00~14:00、19:00~21:00
定休日 日・月曜
https://tourdargent.com/

Column
CREA Traveller
文藝春秋が発行するラグジュアリートラベルマガジン「CREA Traveller」の公式サイト。国内外の憧れのデスティネーションの魅力と、ハイクオリティな旅の情報をお届けします。
2024.03.25(月)
文=鈴木春恵
撮影=武内正夫
編集=矢野詔次郎
CREA Traveller 2024 vol.1
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。