この記事の連載

 美食の街パリを支えるのは、ビストロからガストロノミーレストランまで様々な舞台で創造に心を砕く料理人たち。持続可能な食の未来を考え、素材と対峙する。

 ゲストの顔がほころび会話も弾むような、美食の食卓へと出かけよう。パリで注目のシェフ&レストランを6回に渡りご紹介。


待望の新たなるステージで創造される渾身の一皿

◆Blanc(ブラン)

 新しいステージに立ち、「自分が好きだと思うものしか創りません」と断言する佐藤伸一シェフ。パリ2区の歴史的なパッサージュで「パッサージュ53」を開き、2011年にミシュラン2ツ星を獲得。

 それを8年間守り続けた2019年初春、新たな挑戦のためのステップとして、突如閉店を決定するも、その後コロナ禍という困難に直面。結果、パリでは約5年の空白を生むこととなった。

 そのシェフが2023年10月「ブラン」の開店に漕ぎ着けた。新たなステージは、約30年間ミシュラン2ツ星を守ったアンリ・フォジュロン氏の伝説的名店のあった場所。

 80歳になるフォジュロン氏にも祝福され、唯一無二の美食空間となることは確かだろう。隈研吾氏による現代美術の舞台のような内装も印象的だ。

 素材の特徴を突き詰める佐藤シェフの姿勢は、「パッサージュ53」時代以上に研ぎ澄まされている。「ブラン」とはフランス語で「白」。白いキャンバスに描かれる料理は、画竜点睛をついた渾身の作品だ。

 たとえばキャビアの一皿。上にのせたアイスクリームは、牛乳を凍らせてから水分を除いた濃縮ミルクに牡蠣を合わせ、さらに10年もののシングルモルトウィスキー「ラフロイグ」を加えて作る。

 ラフロイグはスコットランド・アイラ島の蒸溜所。磯の香りが重なり合い、三位一体の味覚が生まれる。

 調理には、減圧蒸留機や遠心分離機なども取り入れ、目指す味わいに近づけていく。際限のない探求心で佐藤シェフは、確実に美食の極みへと向かっていく。

Shinichi SATO(佐藤伸一)

1977年生まれ、2000年に渡仏。「アストランス」でスーシェフを務めた後、「ムガリッツ」へ。2009年「パッサージュ53」をオープンし、2011年版ミシュランで日本人初の2ツ星を獲得するも2019年に閉店。2023年10月「ブラン」を開く。

Blanc(ブラン)

所在地  52 rue de Longchamp 75116 Paris
電話番号 01 70 60 12 00
営業時間 12:00~13:00 入店、19:30~20:15 入店
定休日 日・月曜、火~木曜のランチ
https://blanc-paris.com/
※予約はウェブサイトからのみ

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2024.02.29(木)
文=伊藤 文
撮影=小野祐次
編集=矢野詔次郎

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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