長編引退宣言したものの「本当にみっともないけど、もう一本作りたい」

 何度も「引退」を口にしては復帰し、その上、大きな賞を受賞と、創作意欲の衰えを感じさせない宮崎監督の活動ぶりだが、次作については、

「まだ何も(長編については)決まってない。白紙です。準備からすると10年ぐらいかかって作ったわけで、宮﨑も僕も疲れてますが、スタッフもみんな疲れてるんですよね。疲れをとるのにもう少し時間がかかるんじゃないかと思ってます。その上で考えたい」

「でも、短編映画には前向きですね。やりたいんだけど、まだ今は映画公開中だから(具体的には進めてない)」

 いつからか鈴木プロデューサーが宮﨑監督の“代弁者”として語る状況が続いているが、その理由を、

「『二度と作品を作らない』と大記者会見をしたじゃないですか。それを反省してるんですよ(笑)。今作を作るときにも、『みっともないのはわかってる』って言ったんですよ。『本当にみっともないけど、もう一本作りたい』と。これ、本心だと思うんですよ。『もう世間には出ません』と。一生懸命皆さんの前で説明しても、噓になっちゃうわけでしょ?」

「特に『千と千尋の神隠し』の時ですけど、『一生分のインタビューはもう受けた』と言ってるんですよ(笑)。これ以上彼にそれを要求するのは間違っているんじゃないかと。皆さんは、もう少し話を聞きたいというのはあるのかも知れないんですけど、代わりに僕が喋っているので、ご勘弁ください」

 と説明した。

トレードマークのヒゲを剃った宮崎駿

 露出の少ない宮崎監督だが、先日、アカデミー賞のYouTubeチャンネルで配信された映像の中で、トレードマークとなっていたヒゲを剃った姿が話題になった。

「ヒゲは、僕が『切ったら』と言ったんです。気分転換にいいんじゃないかって、冗談で押さえつけて(笑)。ヒゲがあると立派そうに見えるじゃないですか。それを取っ払うところからスタート。本人もね、ヒゲを剃った後は、それまではそうじゃなかったんだけど、やたら鏡を気にするようになりましたよ(笑)。そんなこともありました」

『君たちはどう生きるか』は3月20日から拡大公開と同時に、日本語字幕付きの英語吹き替え版も公開されるとのこと。米国人、そしてアカデミー会員が観た『The boy and the heron』(英題)を観られるチャンスということになる。

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2024.03.21(木)
文=週刊文春CINEMAオンライン編集部