この記事の連載

 現在、全国各地の観光地では、交通機関や施設の混雑、騒音、マナー違反といったオーバーツーリズムが問題になっています。

 これらの問題を防ぐため、沖縄県ではエシカルの概念を取り入れた新しい観光の考え方「エシカルトラベルオキナワ」を展開中。沖縄観光コンベンションビューローが運営する沖縄観光情報WEBサイト「おきなわ物語」では、エシカルな旅を体験できる多数のコンテンツを紹介しています。

 沖縄の自然や伝統文化、産業に触れることができるこれらのコンテンツですが、実際にどんな体験ができるのか、4つのコンテンツをピックアップしてご紹介します。

 第2回は、琉球びんがた染め体験です。

» 第1回 海洋プラスチックアート作り体験
» 3回 コーヒー豆収穫体験と星空観測ツアー


作家から美しい布の世界を学ぶ

◆首里染織館suikara 琉球びんがた染め体験プログラム

 琉球の都・首里にある「首里染織館suikara」。ここでは、沖縄の伝統的な布の世界を楽しめる「琉球びんがた」と「首里織」の体験プログラムを実施しています。

 琉球びんがたと首里織は沖縄県の無形文化財であり、国指定の伝統的工芸品ですが、もともとは王宮・首里城で王族や貴族、士族が衣装として身に纏っていた高級品。この伝統を現代に継承する場所として、2022年に誕生したのがこの首里染織館suikaraです。

 びんがたや首里織の技法を学んだり作品を鑑賞したりする拠点として琉球びんがた事業協同組合と那覇伝統織物事業協同組合(首里織)によって設立され、後継者育成や体験プログラムの実施、展示ギャラリー・ショップの運営を行っています。

 フロアは全3階で、1階は展示ギャラリーとショップコーナー、2階はびんがたの作業フロア、3階は首里織の作業フロアとなっています。

 この施設で体験できるのは、びんがた染めと首里織の機織り。首里織を体験する場合は3階へ。作業室には15台の織機があり、そのうち2台が体験用。職人の指導のもと首里織が楽しめます。

 かつて琉球王国がアジア諸国と盛んに交易していた14~15世紀ごろ、首里城には珍しい品物がたくさん集まり、そのなかにはさまざまな技法で織られた織物があったといいます。その織物を琉球スタイルに昇華させたものが首里織です。

 首里織は5種類あり、なかでも織るのが難しいといわれているのが「首里花倉織」。透ける絽織と花織が一枚の布の中に共存する夏衣用の織物で、王族しか身につけられなかったもの。

 現在約96人いる組合員たちのなかでも、首里花倉織を織れるのは25人ほどなのだとか。繊細な模様が美しい首里織は高度な技術を必要とするもので、この技術を伝承していくために後継者の育成にも力を入れています。

 作業室の前には、組合員たちが制作した首里織を飾った「那覇伝統織物事業協同組合ファブリックボード」があるので、訪れた際にぜひ見てみてください。

 首里織に使用する糸は染色室で染められているのですが、染料は、ブルーは琉球藍、黄色はフクギ、ピンクは月桃やガジュマル、桜といった植物性の素材からできています。

2024.03.15(金)
文=佐藤由樹