「パディントン」シリーズの訳者として知られ、一昨年に亡くなった児童文学者の松岡享子さん。絵本の読み聞かせについて松岡さんがアドバイスを綴った『えほんのせかい こどものせかい』(文春文庫刊)が、今、子育て中のママやパパから熱い視線を集めている。

「子どもが、絵本から受ける素朴な感動を、うんと大事にしてやってください」
「物語絵本はたのしむもの……どうぞ質問魔、説明魔にならないでください」
「“満25歳以上”の(ロングセラーの)絵本を読みましょう」(本文より)

 滋賀県大津市立図書館の司書・松本まどかさんは、読売新聞の連載『読書の達人・司書のコレ絶対読んで!』(2023年10月7日掲載)で、「語りかけるようなやわらかい文章が、スッと心に溶け込みます。」とインタビューで答えている。

 文春文庫部の担当編集者Iさんは、「去年10月に、松本さんのインタビュー記事が出てから、本書の売上がじわじわ伸びて、先日、重版が決まったばかり。この本で紹介されている読み聞かせのコツは実践できるものばかりなので、幼稚園や小学校の“お受験”を目指す親御さんにとっても、頼りになる本であることは間違いないですね」と語る。

 

読者の信頼を得ている「絵本ガイドのバイブル」

 もともと本書の単行本は1987年に刊行され、以来、ずっと版を重ねてきたロングセラーで、絵本の読み聞かせを志す人には「教科書」「バイブル」と言われているほど支持を集め、読者の信頼を得ている本なのだ。

「どのように絵本を読み聞かせしたら良いか?」という疑問には、写真やイラストを交えながら丁寧に解説されているので分かりやすい。また、子ども達に最も喜ばれた、グループの読み聞かせにおすすめしたい34冊の絵本を、写真入りで紹介。

「『どろんこハリー』『ちいさいおうち』『かいじゅうたちのいるところ」『ちいさなうさこちゃん』『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』……40代の私にとっても、子どもの頃に読んだ絵本ばかりで、つい懐かしくなってしまい、子ども以上にワクワク興奮してしまいます」と、Iさん。

 どんな親も、わが子には、人の気持ちを理解できる、思いやりをもった優しい人間に育ってほしい、と願っている。そのためには、想像力を育てる絵本を、幼い時期に読み聞かせしてあげるのが、なによりの方法。その大人たちの背中を後押ししてくれるのが、大勢の子どもたちを観察し、絵本の読み聞かせを長年実践してきた「絵本」のプロ・松岡享子さんによる本書である。

えほんのせかい こどものせかい (文春文庫 ま 40-1)

定価 792円(税込)
文藝春秋
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2024.02.25(日)
文=「本の話」編集部