人形浄瑠璃の“元祖”を淡路島の土地で見る

 人形浄瑠璃は物語を語る太夫、音を奏でる三味線、人形を操る人形遣いの3つから構成される総合芸術。江戸時代以降、歌舞伎と人気を二分して発展したのは、歴史の教科書で習ったとおりです。

 その元祖となる神事の“人形操り”が生まれたのが淡路島で、上方から新しい浄瑠璃や技術をいち早く取り入れ、今の淡路人形浄瑠璃の型となったそう。そして1976年に淡路人形浄瑠璃は国指定重要無形民俗文化財に登録されました。

 今年60周年を迎える淡路人形座は、人形浄瑠璃500年以上の歴史を今に伝える常設館です。かつては淡路島に40以上の人形座がありましたが、今ではここ淡路人形座のみとなりました。

 現在、人形遣い8人、太夫4人、三味線3人がプロとして在籍している淡路人形座。その中で若手人形遣いの期待の星が吉田千紅(よしだせんこう)さん。

 吉田さんがはじめて人形浄瑠璃を見たのは、小学校5年生の頃。その時は「あぁ眠たいなぁ」という印象だったとか。それが変わったのが、中学での部活見学の時。人形浄瑠璃部の先輩が鏡を見ながら糸に吊るした人形の“足”で練習しているのを見て、「あ、人間みたいに動くやん、面白そうやな」と。そして入部を決めたとか。

 高校進学も人形浄瑠璃部がある学校を選び、卒業後の進路について担任に淡路人形座に入りたいと相談。けれど、重いものでは10キロ近くある人形を扱う仕事は女性には厳しいのでは、と難色を示されたそう。それでも人形浄瑠璃への思いは消えず、淡路人形座では当時、人員の募集はしていなかったけれども、その情熱を認められて晴れて座員に。

 人形浄瑠璃への原動力を聞くと、「部活で老人ホームとか、いろんな場所で公演に行かせてもらったのですが、やっぱり拍手をもらうのって嬉しかったんですよね。それが忘れられへんかったのかもしれません。歌舞伎は男性だけですけれど、淡路人形浄瑠璃は人形遣い、太夫、三味線のどれでも女性が舞台に立てます。女性が活躍できる場でもあるんです」。

2024.01.27(土)
文・撮影=古関千恵子