ぼくにとって、この言葉はとても大きなものでした。
鈴木さんも宮崎さんも、自分のためにではなく、まわりのために、そして最終的には、作品を見てくれるお客さんのために映画と向き合っている。
それに対してぼくは、「自分のやりたい企画」「自分がいいと思うアイデア」に固執していた。
「自分のことばかり考えている人が、鬱になるんだよ」
いつのまにか「責任感」と「自己肯定」をはき違え、自分のことばかり考えて仕事をしていたことに気づきました。
そこでぼくは、自分発の企画ではなく、自分のことを必要としてくれている人からもたらされた企画を片っ端から受けることにしました。
結果は劇的でした。
人からは、「あいつに頼めばなんとかしてくれる」と信頼してもらえるし、自分の心も健全です。さらに得られたのは、人のふんどしを借りた仕事のほうが、自分をちゃんと出すことができる、という真実でした。
よく鈴木さんは、
「自分のことばかり考えている人が、鬱になるんだよ」
と言っていました。自分のモチベーションとか、成功とか、自己実現とか、そういうものにこだわりすぎる人は、どんどん心が狭くなる、というのです。
〈「すぐに、パソコンに向かって仕事をするな」「主観は捨てろ」ジブリ鈴木敏夫プロデューサーから学んだ「人に伝わる文章」を書くための4つの極意〉へ続く
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2024.01.02(火)
著者=石井朋彦