「撮影の打診がものすごく来る!」

「海外でも歌うんですか!? マネージャーは誰が行けます?」

 と、事務所内がバタついていました。そう、海外でも、です。

 この頃、すでに世界で日本のアニメブームは始まっていました。海外の大きなアニメイベントに、今ほどではないですが、日本のアニメ関係者がゲストとして招待される機会も増えていました。

 私が初めて招待されたのが、台湾・台北でのアニメイベントでした。トークショーでは通訳の方がずっとついてくれていたのですが、日本語が、特にアニメファンの人たちにはとても伝わることに驚き、うれしかったです。イベントを特集した雑誌の表紙に「世紀末極速女王傳説 後藤邑子」と見出しが載っているのを見つけ、私のひとり歩きしたイメージが、ついに海を渡っていたことも知りました。

 

「関羽がさじ加減を知らない!」

 イベント後は、声優雑誌「声優グランプリ」の撮影も兼ねて龍山寺へ。建造物としても華やかで絵になる有名なお寺です。

 仏教や儒教に民間信仰も混ざって、たくさんの神様が祀られていました。神様によって叶えてくれるものが違うので、どんなジャンルの願いもここにくれば叶うのです。メインは7人の神様で、その中には三国志の武将「関羽」も、神様のひとりとして祀られています。

 それぞれの神様の前に香炉(線香立て)があり、お寺の入口で購入した7本の巨大な線香を立てていきます。特に決まりはないので好きなバランスで線香を立てればよいとコーディネーターの方に聞き、三国志の中で一番好きな関羽の香炉に、7本の線香をすべて立てて驚かれました。え? 変なの? 関羽好きだから関羽に立てるって自然じゃない?

 よく見ると皆さん、数本ずつ、それぞれの神様の香炉に立てています。健康運3本、恋愛運2本、仕事運2本というように。なるほど、バランスって、こういうことか。ちなみに関羽は、その誠実で信用される性格から、「商売、仕事の神様」だそうです。私は、勢い仕事運に全フリしたわけです。その後、入院するまで5年間休みがありませんでした。ご利益が容赦ない。龍山寺、望んだもの以外をすべて捨てる覚悟がある人は、ぜひとも行くべき寺院です。

2023.12.11(月)
著者=後藤邑子