再び新たな時代を歩み出した名建築ホテル

◆HOTEL IL PALAZZO(ホテル イル・パラッツォ)

 20世紀を代表する世界的な建築家イタリア人のアルド・ロッシと日本を代表するインテリアデザイナー内田繁がタッグを組み、日本初のデザインホテルとして1989年に誕生した、福岡の「ホテル イル・パラッツォ」。アルド・ロッシは1990年に建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞、1991年にアメリカ国外の建築物として史上初となるアメリカ建築家協会(AIA)名誉賞を受賞している。また、ホテルは1990年に福岡市都市景観賞を受賞した。

 そんな「ホテル イル・パラッツォ」が、内田繁の当時の思いやデザインの理念を受け継ぐ「内田デザイン研究所」をパートナーに、34年の時間を経て“Re-Design”。2022年1月よりはじまった大規模改修(“Re-Design”プロジェクト)を終え、2023年10月1日(日)、ついにグランドオープンした。

 およそ2年におよぶ“Re-Design”プロジェクトでは、1989年開業時のホテルロゴデザインを復活させ、アルド・ロッシ設計の外観デザインはオリジナルを尊重して一部を復元するなどのほか、古き良き往時のスタイルを残しつつバージョンアップされている。

 例えばそのひとつが、ディスコ、イベントホールなど時代やニーズに合わせて独自のカルチャーを発信してきた地下空間だ。

 この地下空間は、ストライプや列柱、赤・青・緑の配色など、ホテルが持つオリジナルのデザインを全面に取り入れて“Re-Design”。「EL DORADO(エル・ドラド)」の名を冠した130席の大型ラウンジに生まれ変わった。

 ラウンジ奥の中央にそびえ立つ黄金のファサードは、アルド・ロッシがデザインした同名のバー「エル・ドラド」から内装の一部を移築。その手前には内田繁が晩年に手掛けたインスタレーション作品「Dancing Water(ダンシングウォーター)」を配置。伝説のふたりの意匠が再び共演を果たしている。

 多様なスタイルの約130席がひとつの空間でつながるラウンジ「EL DORADO(エル・ドラド)」は、朝7時から深夜3時まで、人数・時間・シーンに合わせた使い方が可能。

 朝食からディナータイムまではブッフェ形式のフードプレゼンテーションを行い、21時以降はバーラウンジとして照明を落とした大人の空間となる。

 滞在中の宿泊ゲストは客室以外に寛げる“もうひとつのリビングルーム”として自由にアクセスでき、ビジターも利用可能。細部までデザインされた空間と自由にセレクトできる食を通じて、ほかでは体験できない過ごし方を提案してくれる。

 客室は、全77室。スーペリアクイーンとデラックスキングの2タイプに加え、かつてエントランスとレセプションだった2階にはバルコニー付きの客室が新設された。

 また3階から8階までの客室も全面改装。スランバーランド社最上級クラスのダブルクッションのベッドを配し、ソファ・テーブルのデザインはホテル開業当時のデザインと配色から再構築したものを採用。地下ラウンジ「EL DORADO」の賑わいに対し、客室は静かで穏やかなプライベート空間を追求した造りとなっている。

 歴史的建造物としての価値を再認識し、当初の理念を承継した“Re-Design”プロジェクトによって、再び新たな時代を歩み出した「ホテル イル・パラッツォ」に、世界が羨望のまなざしを注いでいる。

HOTEL IL PALAZZO (ホテル イル・パラッツォ)

所在地 福岡市中央区春吉3-13-1
電話番号 0570-009-915
https://ilpalazzo.jp/

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2023.12.12(火)
文=立花奈緒(ブレーンシップ)