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子どもにも大人にも、男性にも女性にもなれるのは面白かった

のん 『未来』のあとがきで湊先生が「こういう子たちがいる、こういう状況があるということを知ってほしい」と書かれていました。それを拝見して、使命感みたいなものを抱いて読みました。

 ミステリとかサスペンスの刑事もの、探偵ものだと、殺人や犯罪といった反社会的な場面が出てきてもエンタメとして見てしまうというか、俳優として自分が演じるシーンを想像してしまい、それも楽しみ方の一つではあるのですが、『未来』にはそういう感情が一切湧きませんでした。同じ湊先生の作品でも、自分が勤める中学校で一人娘を亡くした女性教師が主人公の『告白』などとはまったく違う視点で読ませていただいたつもりです。

 それから、個人的には希望が見えるラストがすごく好きなので、そこは特に大事に読みました。

 すごく嬉しいです……。実は、私の小説をAudibleにしたいとご相談いただいた当初は、正直「本ぐらい自分で読めばいいじゃん」と思っていたんです(笑)。

 でも、Audible化した作品を聴かせていただくと、のんさんもそうですが、皆さん演技をしながら読むわけではないんですよね。音の抑揚やスピード、ボリュームで地の文とセリフの違いがわかるし、ことさら演じ分けているわけではないのに、セリフの話者が自然と解釈できる。自分1人で読書していたときには想像もつかなかった解釈や表現力を、役者の方が色付けてくださっているんです。

 朗読はただ文字を読むだけでなく、ドラマや映画のように物語を表現する芸術の一つの表現方法なのだとあらためて感じました。のんさんの朗読によって自分の解釈や読み方以上に、本の世界がすごく豊かになる。とても贅沢な体験ですよね。

のん 読み手にとっても贅沢な体験でした。子どもにも大人にも、男性にも女性にもなれるのは、とても面白かったです。

 Audibleでのんさんの『未来』を1回聴いたら、次に本を読み返すときも、のんさんの声が頭に浮かぶんです。それに、『未来』では、のんさんが視点人物以外の登場人物にも立体感をつけてくれているので、平面的な読書を立体的に楽しめる。それも、Audibleのすごいところだと思います。というよりも、のんさんのすごいところかな。のんさんの『未来』をもっといろんな人に知ってもらいたいという欲が高まりました!

のん ありがとうございます! 本当に嬉しいです。これまでやったことがないようなキャラクターも朗読させていただけたので、自分自身も本当に大事な経験になりました。

 今日は本当にありがとうございました。

未来

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衣装クレジット(のん)

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2023.11.17(金)
文=相澤洋美
撮影=深野未希