大事にしていることは、ほかにもいろいろありますよ。演技は共同作業なので、相手の反応によって変わっていく。だから家で固めすぎたらいけないし、プランは立てられないと思っています。ある程度の準備は必要だけど、相手と向き合って、そこでの掛け合いで生まれるものがすごく多い。そのバイブレーションっていうのかな。そういう動きみたいなものがすごく大事です。相手の出方によって演技を変えていくのが楽しいですよね。
それは相手役の方だけでなく、現場そのものに対しても言えることだと思います。現場と自分のチューニングの合わせ方は、その都度変えていったほうがいいのかなって。監督と話してみないとわからないから、前もって決めつけられないんですよ。舞台も同じで、お客さんの反応によって演技は変わる。その時にならないとどういう演技をするかわからないくらいのほうが面白いじゃないですか。
――それは演技論でよく言われる、「反射する」ということですよね。自分の外側で起きていることに、ただ反応するという。
稲垣 ええ、そうです。反射から生まれることがすべてかなと。それができていると思っているわけではなく、単にそのほうが楽しいと思っているだけなんですけどね。
撮影 榎本麻美/文藝春秋
メイク 金田順子
スタイリング 黒澤彰乃
2023.11.05(日)
文=門間雄介
撮影=榎本麻美/文藝春秋
メイク=金田順子
スタイリング=黒澤彰乃