普段ひとりでいることが多いですからね。いまはもうグループではないし、ひとりで暮らしていて、家族がいるわけでもない。毎朝オフィスに行って、同僚に会うわけでもありません。だから共同作業をして、なにかを作っていくことが楽しいんです。

 ジムでもたまに感じますよ。みんなで同じ方向を向いて、がんばって体を鍛えていると、仲間意識を覚えることがある。たとえがちょっと変かもしれないけど(笑)、そういう感じに似ているのかもしれないです。

 

――演じることには、そういった共同作業の楽しさが含まれるんですね。

稲垣 そうです。演じて、カメラに撮られる楽しさだけではないんですよ。だからといって現場でいろいろな人たちと話すわけではないですけど、現場の雰囲気を見ているのがすごく好きです。自分はひとりが好きで、他人に興味のない人間だとずっと思ってきたけど、実はそうじゃないみたいだなと、現場にいると思います。ひとりでいることが好きなようでいて、意外と人のことも好きなんだなって。

 テレビやラジオの番組でゲストの方と話している時も、本当にその人に興味を持って話を聞いているから、人に興味があるんですよ。普段はそういう自分はいないんですけどね。誰かがしゃべっていると、うるさいと思ってテレビもすぐ消しますし(笑)。

 きっと自分の中にふたりいるんです。誰にも構われたくないと思っていて、ひとりでも十分満たされる自分と、輪の中に交じって、なにかを作ることに楽しさを感じる自分。うまくバランスを取っているんでしょうね。それでいまの自分が成り立っているのかなというふうに思います。

稲垣吾郎が演じるうえで大事にしていること

――今回の『正欲』を始め、演技する際にとくに大事にしていることはなんですか?

稲垣 まずいちばんは監督です。リーダーは監督だから、監督の作品の素材にちゃんとなれるようにとつねに思っています。作品によって求められるものは違うので、演技の仕方を変えていかないといけませんよね。スケール感を変えるというか。そういう意味では、職人的でありたいと思っているのかもしれません。目標です。いまできているかわからないけど、それが理想だと思います。

2023.11.05(日)
文=門間雄介
撮影=榎本麻美/文藝春秋
メイク=金田順子
スタイリング=黒澤彰乃