この記事の連載
- 片岡愛之助「翔んで埼玉」インタビュー前篇
- 片岡愛之助「翔んで埼玉」インタビュー後篇
大河ドラマを演じるつもりで臨んだ
──演技に対しても、監督からは歌舞伎らしさを求められたシーンはありましたか?
それはなかったですね。ただ、監督からは撮影に入る時に、「大河ドラマを撮っているつもりでやってください」と言われました。
歌舞伎も普通の芝居も同じだと思いますが、真剣にやればやるほど、面白さって増してくるものなんです。人を笑わせる演技をするためには、中途半端にふざけてやるより、真面目にバカを演じたほうが絶対に面白い。だから監督も「大河ドラマを撮るつもりで」とおっしゃったのだと思います。
GACKTさんも「こんな格好してますが、全力で茶番を演じています」とおっしゃっていましたが、僕も大真面目に「んなアホな!」というような演技やセリフを披露していますので、そこはぜひ期待してください。
──愛之助さんが演じる嘉祥寺晃は威圧的なセリフが多いので、真剣に演じすぎると、ただの怖い人になってしまいそうな気もします……。
確かに、はじめから結構人々をいたぶるシーンが多かったので、監督には「やりすぎてたら言ってください」とお願いはしてました。案の定、やりすぎて暴走してしまう場面もありましたが、絶妙なキャラクターを作り上げていきました。
一年間に及ぶブランクを乗り越えて
──原作にはない映画オリジナルのキャラクターは、何を参考に役作りをされたのですか?
役作りに関しては、監督とだいぶディスカッションを重ねました。世界観をつかむために、もう一度前作を見返したりもしましたね。
あとは現場に入って、セットや衣装を身につけながら、だんだんと「嘉祥寺晃」になっていった感じです。今回、最初に撮影したのが、大阪の町並みでたこ焼きを食べ歩くシーンだったんです。杏さんが演じる桔梗魁と初めて会うシーンも撮影して、さあここから! というところで1回撮影中止になりまして、そのまま1年間、撮影がストップしてしまいました。
正直、「これはもうお蔵入りかな……」と覚悟した時期もあったんですけど、急に撮影再開の話がきて……。そこからは早かったですね。
大分時間が空いてしまったので、うまくつながるのか少し気になりましたが、できあがってみたら、まったく違和感のない仕上がりになっていて、関わるスタッフの意気込みや力量を感じました。
──いろいろご苦労も多かった本作ですが、映画が完成したいま、どのようなお気持ちですか?
撮影中は毎日がお祭りのようで、ただひと言、楽しかったです。楽しすぎて、正直、あまり働いているという感覚がなかったくらいでしたね。
でも一番楽しんでいたのは武内監督だと思います。どんな演技をしても「最高です!」と褒めてくださるので、じゃあ次は違ったパターンでやってみようかなと、こちらもどんどん挑戦したくなる。うまいですよね(笑)。
しかも今回の現場って、割本(その日に撮影するシーンの撮影カットなどをまとめたスタッフ用の台本)がなかったんですよ。だからどのシーンをどれくらい撮るのかわからずに現場に挑むという恐ろしさもありましたが、終わってみればそんな監督のやり方もすべて、このすばらしい作品を生み出す力になっていたように感じます。
物語の魅力はもちろん、キャストの魅力、そして愛あるディスりで、超一流のエンターテインメント作品になったと思います。僕の中では、この作品は役者人生のベスト3に入るくらいの名作なので、たくさんの方に観ていただきたいです。……あ、「めいさく」は「迷う」ほうの「迷作」ではないので、漢字を間違っちゃダメですよ(笑)。
映画『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』
2023年11月23日(木・祝)全国公開
2019年に公開され、興行収入37.6億円の大ヒットを果たした空前絶後の茶番劇。「埼玉県人にはそこらへんの草でも食わせておけ!」「埼玉なんて言ってるだけで、口が埼玉になるわ!」といった埼玉ディスを連発しつつ、作品全体に漂う「愛あるディスり」に日本中が魅了された。
今作は、「日本埼玉化計画・第II章 東西対決」をテーマに、スケールも大幅にパワーアップ。GACKTさん、二階堂ふみさんのメインキャラクターを軸に、片岡愛之助さん、杏さんといった強力なキャラクターが登場し、原作の世界観はそのままに、映画オリジナルストーリーで、日本全国を巻き込んだ東西対決が描かれている。
キャスト:GACKT、二階堂ふみ、杏、片岡愛之助 ほか
監督:武内英樹
公式Xアカウント:@m_tondesaitama
2023.11.21(火)
文=相澤洋美
写真=橋本篤
メイク=青木満寿子
ヘア=川田舞
スタイリング=九(Yolken)