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吉村府知事が目を輝かせた瞬間

──今回は続編とはいえ、原作にはない映画オリジナルのストーリーです。愛之助さんが演じる「大阪府知事・嘉祥寺晃」も映画独自のキャラクターですが、どのように役作りをされたのですか?

 実は僕、吉村洋文大阪府知事と仲が良くて、時々一緒に食事に行ったりすることもあるんです。今回の役が決まった時はまだ情報解禁前だったので「僕、今度大阪府知事の役やることになりました」と報告したんですけど、「そうなんですか!」と目を輝かせていたので、「絶対怒らないでくださいよ、日々研究した結果ああいう形になったので……」とお伝えしておきました。映画を観たら驚くでしょうね……(笑)。

──吉村府知事も、「大阪府知事の役」と聞いて、まさかあそこまで破天荒な人物だとは思いませんよね。

 僕もです(笑)。あの世界観は知っていましたが、僕の役は「大阪府知事役」だと聞いていましたから、作品のなかではまあ無難な役どころになるんだろうなと勝手に思っていたんです。ところが、台本を読むととんでもない発言が多いじゃないですか。「ガタガタ言うやつは、甲子園に放り込んだれ!」なんて荒ぶったセリフが出てきたりして、「Vシネじゃないよね……」と思わず台本を読み返しました(笑)。

──衣装やメイクも強いインパクトがありました。

 あの衣装は、池乃めだか師匠のトレードマークとも言える衣装を模したものなんですけど、わかりました? 監督は「衣装の柄を見たら、大阪の人はすぐわかる」とおっしゃっていましたが、僕は言われるまで気づきませんでした(笑)。

 でも言われてみると確かに、オレンジにピカピカの金が入ったあの生地は、めだか師匠の衣装なんですよね。いわば、「大阪代表」ともいえる柄ですね。

 メイクに関しては、僕だけすごく濃いので、最初加減がわからなくてちょっと悩みました。室内の薄暗いシーンではかっこいいんですけど、明るい屋外のシーンだと、僕だけ浮くのではないかと。最後までドキドキしていましたが、カメラテストではばっちり決まっていたので安心しました。

日本舞踊の先生に振付を依頼

──終盤の集団でケチャダンスを踊るシーンでは、愛之助さんは歌舞伎のような舞も披露されていました。あれは愛之助さんのアイデアですか?

 いえ、あの舞は、父・秀太郎の代から交流のある花柳流の先生が考えてくださったものです。家族みたいに親しくお付き合いしている花柳双子(そうこ)先生という方に、僕から振り付けをお願いしました。

 それなのに、習った踊りを覚えて現場に行ったら、監督からいきなり「こんな感じで振り付けを追加したいんだけど、ちょっとやってみて」と言われまして、もう「えええ~!」ですよ。

 仕方ないので「こんな感じですか?」と即興で踊ってみたら、「いいですね、じゃあそんな感じでいきましょう。はい、撮影入ります」って。むちゃくちゃですよね(笑)。

──優雅な舞のシーンの裏にそんな“事件”が潜んでいたとは思いませんでした(笑)。

 もう当たって砕けろとばかりに、音に合わせて動きました。ただ、普段聞き慣れている三味線の音ではないので、感覚がつかみにくくて苦労しました。すごいヒールの高い靴を履いていたので、それも踊りにくくて……。

 衣装的に一度膝をついたら立ち上がれないですし、でもそれでもやるしかないと、そんな状況も楽しみながらやらせてもらいました。

 扇子を提案したのは僕のアイデアです。もともと双子先生に和と洋のコラボレーションで振り付けをお願いしていたので、扇子を使ったほうがより歌舞伎らしさが出せるのではないかと、扇子を取り入れました。

2023.11.21(火)
文=相澤洋美
写真=橋本篤
メイク=青木満寿子
ヘア=川田舞
スタイリング=九(Yolken)