「千早メモ」の秘密

 読書会の後半は、自由な質疑応答の時間に。

――『しろがねの葉』で取り入れた新しい要素はなんですか?

千早 はじめて書いた時代小説という部分ですね。史実というものがあって、その事実自体は歪めずに、歴史に沿った話を書かなければならないので、まず年表をしっかり作りました。そして史実とは別の部分で自分自身の作品を書こうと考えました。その時代に生きた人を書く、というのが目指したところです。

――創作に関して、メモはしますか? 手書きとメモアプリを使い分けているとしたら、その理由はなんでしょうか。

千早 メモはたくさん取ります。私は食べることが好きなので、食べた時に感じる季節感だったり、お店の食事に対する細やかな気遣いだったり、とか。外食をしているときはお店の迷惑にならないようにメモアプリを使いますが、基本はノートに手書きですね。手書きだと、それをメモしているときの自分の感情も文字に残るんです。あ、この時はすごく興奮していたな、とか、あとで分析できるようにしておきます。
お風呂の中で小説に書きたい一文が浮かんだら、お風呂を出てすぐにメモしたり、インタビューを受けている時も、自分が逆に聞きたいことが浮かんだら、それを聞いてメモしたりもします。私はわからないことが多くて、小説を書く時にも、日常の中で感じた疑問が原点になるので、その整理のためにも、たくさんメモを取ります。
パフェが好きなんですけど、パフェの断面図を描いて、層ごとの構成要素をメモします。それは小説のためではなくて、個人的な研究なんですけど、パフェの構成には作り手の意図や演出があるので、それを読み解くのが楽しいんです。

 読書会のあとに行われたサイン会でも、参加して下さった方から、たくさんの素敵なお言葉が千早さんに直接伝えられた。高校生のみなさま、ありがとうございました!


☆読書会直後に収録された『マリエ』についての千早さんのインタビューは「本の話ポッドキャスト」でお聞きいただけます。読書会についても感想もお伺いしています!

2023.09.15(金)