芸術と道が重なり合うところ

 軽井沢安東美術館には、創設者夫妻が約20年かけて収集した、藤田嗣治の作品が展示されている。間口の広い建物ながら外構えは控えめで、入り口玄関から芝の緑も鮮やかな中庭、そこに面した廊下から展示室へアクセスする間取りは、どこか人の家のよう。いわば家庭的かつ親密な雰囲気の中で鑑賞できる、プライベート・コレクションだ。

「レオナール・フジタは、パリでの足跡を追うテーマで執筆したことがあって、個人的に想い入れがある画家。猫の作品が好きです」

 と、飯嶌さん。展示スペースは緑、黄、青、赤の部屋に分けられ、特別展示室、屋根裏展示室へと続く。少女や猫を描いた小作品が多いと聞いていた分、年代順に並んだ展示作品が、画家の生涯をほぼカバーするほど多彩なことに、感心しきりだ。

 藤田がパリに渡航した最初期の風景画や、彼を一躍パリ画壇の寵児に押し上げた有名な乳白色の裸婦像まで。南米旅行から従軍画家時代の戦争画や手記、さらには晩年に棲んだパリ郊外の家で、自ら制作し日々用いた陶器や家具など、絵以外の作品まで充実している。視線が美しいものに触れ、自然と飯嶌さんの口元に笑みがこぼれてくる。

「午前中の軽井沢の冴え冴えした空気の中、邸宅のように落ち着いた雰囲気で藤田嗣治の作品を眺めてその生涯を追えるなんて、ホント贅沢ですね。DSのフレンチ・アート・オブ・トラベルもフランス語で言えば「アール・デュ・ヴォヤージュ(L’Art du Voyage、旅という芸術)」。フランス語の“ アール・ドゥ~(art  de~)” と、日本語の茶道とか柔道の“~の道” って、“ 術として突き詰めるもの” という意味で、近いニュアンスだと思うんです。芸術家であり求道者である藤田を、言葉を超えて、とても近くに感じられる展示でした」

 朝駆けドライブ後の美術鑑賞は、やはり格別。そして再びDS 4のシートに戻ると、親密さと心地よさが表裏一体のものという感覚が蘇ってきた。

「大ぶりのシートに包み込まれるような座り心地ですし、街乗りでも高速道路でも乗り心地が一定で、頭をあまり上下に揺すられないから疲れにくいんでしょうね。実際、長い距離を走った後でも、頭がぼーっとした感じがしなかったです」

 洗練と快適性に満ち、乗り手を疲れさせにくい車内は、DSがとくに注力するビアン・ネートル(Bien-être、ウェルネス)の観点によるもの。それこそフランスでは生きる歓びの基幹であり、食欲ひいては食卓の歓びや、社交的な振舞いにも直結するところだ。

 というわけでランチは旧軽井沢の「オーベルジュ・ド・プリマヴェーラ」に向かった。

軽井沢安東美術館

所在地 長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢東43-10
電話番号 0267-42-1230
営業時間 10:00~17:00(入館は16 :30まで)
休館日 水曜(祝日の場合は翌平日)、年末年始、1月中旬、2月下旬
入館料 一般2,300円/高校生以下1,100円(いずれもオンライン予約は-100円)/未就学児童無料
https://www.musee-ando.com/

2023.09.08(金)
構成・文=南陽一浩
撮影=望月勇輝
撮影協力=軽井沢安東美術館、オーベルジュ・ド・プリマヴェーラ
写真協力=DS Automobiles