さらに、先のスタンフォード大学の実験に関連する資料では、駐車中に窓を開けることでしばらくは温度上昇を防ぐ効果があるものの、駐車後50分以降は無対策の場合とほぼ同じ温度になってしまうというデータも残されている。こうした結果は実験条件にも左右されるだろうが、効果の面でも防犯の面でも、長く車を離れる際の「窓開け」は有効な対策とはいいがたい。
いち早く車内を冷やすには
つまるところ、炎天下に駐車する限り、決定的に温度上昇を防げる方法はないといえる。そうなると、「乗車する際にどれだけ早く涼しくできるか」が問題になってくる。これについても、JAFがさまざまな方法を比較した実験データを公開しているので、参照してみよう。
実験で比較されている方法は、「ドアの開閉」「冷却スプレーの散布」「停車したままエアコンON(外気導入および内気循環)」「走行しながらエアコンON」の5つであり、いずれも車内温度55℃の状態から開始。やはり走行風の効果が得られる「エアコン+走行」がもっとも効果的で、開始から2分たたずに車内温度は30℃を下回った。
ただし、ドアの開閉による瞬間的な温度低下も顕著だった。ここで取り入れられているのは「助手席の窓だけを開け、運転席のドアを5回開閉する」というアナログな方法だが、47.5℃の地点までは「エアコン+走行」と同等のスピードで至っている。エアコンを使わず8℃近く温度を下げられるのなら、これを実践しない手はない。
つまりもっとも効率的な車内の冷やし方は、車の中に入る前にドアを何度か開閉して篭もった熱を逃がし、それからエアコンを最低温度に設定してすぐに走り出す、ということになるだろう。
この際、走行開始時点で窓を全開にし、エアコンは外気導入に設定してしばらく走行したあと、車内の熱が逃れしだい窓を閉めてエアコンを内気循環に切り替える、という流れがJAFによって推奨されている。
米国の非営利消費者組織が運営するコンシューマー・レポートにおいても、これと似た手順が紹介されている。こちらは「窓を全開にして10秒から20秒走行」「エアコンの設定温度を最低に」「冷たい風が循環しはじめたら前席の窓を閉めるが、後席側は空気が循環しにくいのでさらに10秒から20秒開けておく」という流れである。
2023.08.30(水)
文=鹿間羊市