こうした掛け合いのなかで、「(木村拓哉は)どういう芝居をするの?」と尋ねた宮崎に対して、鈴木が娘から聞いた言葉を伝えると、宮崎は「それだよ!」と木村をハウル役としてキャスティングすることに賛成したという。
またソフィーのキャストについて、宮崎から出たリクエストは「おばあちゃんから18歳の娘まで、ソフィーは一人で演じてほしい」というもの。こちらもさまざまな人が候補にのぼったが、最終的には倍賞であればそのどちらも演じられるであろうということで、決まったという。
こうして4月と6月にアフレコが行われ、映画は8月3日に完成。ちなみに、倍賞は映画主題歌「世界の約束」も担当した。
公開2日間の興行収入15億円という日本記録を打ち立てる
映画公開は2004年11月20日。公開2日間の興行収入が15億円という日本記録を打ち立て、『もののけ姫』とほぼ同規模のヒットとなった。これにより当時邦画の興行成績の歴代1~3位は、『千と千尋の神隠し』『もののけ姫』『ハウルの動く城』と宮崎作品が独占した。
また『千と千尋の神隠し』の海外での高い評価を受けて、『ハウルの動く城』も高い注目を浴びることになった。9月に開催された第61回ヴェネチア国際映画祭で全世界初披露されると、上演終了後には、5分にも及ぶスタンディングオベーションがあったという。同映画祭では、宮崎とスタジオジブリ作品の質の高さと継続的な達成度の高さが評価され、オゼッラ賞を受賞した。
日本の公開後から徐々に世界各地での公開も始まった。日本公開から約1カ月後の12月24日からは韓国で公開。観客動員数300万人を超え、韓国で公開された日本映画としては歴代第1位を記録した。このほか2005年に入り、香港、台湾でも公開され、大ヒットを記録した。また、2005年1月からはフランスで公開され、公開最初の1週目でその週に公開された映画の動員数で第1位となった。
2005年6月からはアメリカで公開が開始。最大202館で公開された。英語版については、英語版『千と千尋の神隠し』をプロデュースしたジョン・ラセター監督が新作で多忙のため、『モンスターズ・インク』を監督したピクサーのピート・ドクター監督が担当。キャストにはハリウッドの実力派俳優が名前を並べた。主なキャストは、ハウルにクリスチャン・ベール(『バットマン・ビギンズ』)、老女のソフィーにジーン・シモンズ(『スパルタカス』)、荒地の魔女にローレン・バコール(『三つ数えろ』)、カルシファーにビリー・クリスタル(『恋人たちの予感』)。
2023.08.05(土)
文=集英社新書編集部