正月は、家族でマーベル作品一気見

安堂 このエッセイの執筆期間は子育ての時期とも重なっているということで、お子さんについて伺わせてください。両親ともに表現をしていると、子どもは「自分もそっちの道にいきたい」と思う場合も多いですが、川上さんのお子さんはどうですか?

川上 それが、本にはあまり関心ないんですよね。

安堂 え? そうなんですか。映画はお好きなんですよね。小津安二郎作品も観られるそうですね。

川上 わりと小さな頃から、映画を観る根性はあるんですよね。1日5本ぐらい観ていることもある。阿部ちゃんが(川上さんの夫の、阿部和重氏)まだ息子がベビーのときから、これの次はこれ見ると面白いね、とか順番を考えてみせていたから、それが続いてる感じかな。

 最新作を観るためには、過去作を全部順番に観るってことが、阿部の普通の感じなので『ドクター・ストレンジ』を観るために、マーベルの過去作を全部観るっていう修行のようなことを家族でやったんですよ。いつかのお正月、10日くらい家から出ずに。スピンオフもめっちゃあって、観ても観ても終わらない。ひいひい言いながら追いついたんだけど、そしたら阿部はこれが3回目のターンだったっていう。

安堂 (笑)。

川上 だから、今は、息子のなかでアーカイブを観てから最新作を観るっていうのがしっくりくるようになってきてるのかも。最近、「映画館でこれ一緒に観る?」って阿部ちゃんが聞いたら、「ああ、でも、ふたつ前の作品抜けてるから、今回はパスするわ」って返してて。それで阿部ちゃんが、「いやこれは単独でもいけるよ」って誘っても、「いやアーカイブ観てから行く」っていう感じには、なんかなってきてます(笑)

 あとは、うちの場合は、ずっと父親が家にいて仕事してるってのは、息子にとってはいいのかもしれない。性格も合うみたいで。

安堂 話し相手として。

川上 うん、そうそう。あとジェンダーや性についての話も小さな頃からしてるし、学校でも学んでくるので、そこはわたしたちが子どもの頃とまったく違うなあと感じますね。まわりの人たちに、穏やかに接するのが自然な感じなんですね。それはありがたいですね。

2023.07.25(火)
文=CREA編集部
写真=平松市聖