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自分に嫌気がさして、新宿の路地裏で飲んだくれ

──えっ、なぜですか?

遠藤 今なら耐えられますけど、あの頃はとにかく、集団生活とか規律がすごく苦手で、耐えられなかったんです。それで高校も中退しちゃったし、こらえ性がないっていうか、変な逃げ癖がついていたんでしょうね。そんな自分に嫌気がさして、新宿の路地裏で飲んだくれもしました。

──そこからどう立ち直ったのでしょうか。

遠藤 自己嫌悪で3カ月くらい飲んだくれの日々を過ごしていた時に、昔の知り合いと一緒に、自主公演で「動物園物語」という二人芝居をやったんです。その舞台を観に来た前の事務所の社長にスカウトしてもらい、本格的に役者として活動することになりました。そこからは、もう毎日コツコツ努力です。

──「コツコツ努力」ですか……。

遠藤 はい。基本的に勉強が苦手だし、不器用なので、台本を読んで理解したり、セリフを覚えたりするのに、ものすごく時間がかかるんですよ。普通の人が1回読んで理解できちゃうことでも、何回も読まないと覚えられない。だから、ゆっくり読んで、さらに何度も読んで、やりすぎかなと思うくらい努力しています。

 でも、面倒くさいなと思いながらも人より数をこなすことができるのは、自分の強みでもあると思っているんですよね。サ〜ッと読んでサラッと覚えちゃう人もいますけど、俺は到底そんな器用なことはできないので、亀みたいにゆっくりじっくり、一つずつ努力を積み重ねていく。そういう努力ができる人間だということに、誇りを持ってやっています。

──役づくりにも、相当な時間をかけておられるのですか?

遠藤 そうですね。方向が決まれば、あとは比較的自由にやるようにしているんですけど、つくり込むまでには、かなり時間をかけています。

 これは作品によるんですけど、脚本を一語一句変えないほうがいい作品と、自分なりにアレンジを加えて変えたほうがいいものがあるんですよ。脚本家はもちろんプロなので、完璧な言葉選びがされていますけど、それでも変えたほうがいい場合もあるので、そこは現場次第のところもありますね。現場に入って、相手役とのやりとりのなかで信頼関係をつくり、脚本を多少壊しても人物像がブレないくらい、しっかりと役づくりはしています。

2023.07.19(水)
文=相澤洋美
撮影=志水 隆