2001年12月1日、雅子妃は愛子内親王を出産する。この時も「次は男子を」という声が報道されたこともあった。そして2003年12月、雅子妃は帯状疱疹を発症し、公務を休むことになった。翌年、皇太子が記者会見で、いわゆる「人格否定発言」をして大きな問題となる。その後、雅子妃は適応障害であることが発表され、療養生活を送ることとなった。

「ご感想」に込めた両陛下の本音

 その後、長きにわたって公務ができない状況が続いた。その際には、週刊誌などを中心に心ないバッシングが展開されることもあった。今回の展示では、そうした療養や批判に関する部分は描かれず、すっぽりと抜け落ちている。とはいえ、「ご感想」のなかには「時には悲しみを共にし」という表現がある。そこには、そうした困難な道を2人で歩んできたことへの思いが見える。

 

 また、「ご感想」のなかには、「時には言葉にならない心の声に耳を傾けながら、困難な状況に置かれた人々を始め、様々な状況にある人たちに心を寄せていきたいと思います」という表現もある。これは、苦しいなかで声を挙げられない人たちの思いに寄り添いたいという2人の思いだろう。それは、様々な困難を経験してきた2人だからこその言葉ではないだろうか。大きな声だけが、目立つ声だけが拾われていく世の中ではなく、むしろ本当に苦しんでいる、しかし声が出せない人たちの思いを汲み取りたい、それは療養やバッシングの、まさに当事者であった天皇皇后だからこその意識でもあるように思われる。

天皇ご一家3人で行動する意味

「ご感想」はまた、「愛子は、私たちの生活を楽しく和やかなものにしてくれるだけでなく、愛子が学び、経験する一つ一つのことが、私たちにとっても新たな学びへとつながっていると感じます」と、愛子内親王について言及する一段落もある。たしかに、最近は3人で一緒に行動する様子がメディアで数多く報道され、6月8日には御料牧場での静養時の写真が公開された。

2023.06.23(金)
文=河西秀哉