あと意外と役に立つのがコルク栓抜き。瓶のワインを飲む時はだいたい、そこにコルク抜きがあるものだが油断は禁物。一度、ハンガリーの牧童小屋で誰もコルク抜きを持っておらず、四苦八苦したことがある。

 最後は牧童の兄ちゃんが、ナイフの柄で瓶の中に無理やり押し込んでいた。その時に私が持っていたナイフは銀色のソルジャー。こいつには残念ながらコルク抜きはついていない。このときに赤のピクニッカーNLを持っていたらヒーローだったろう。

 ちなみに長年ライバル関係だった両社だが、2005年にビクトリノックスがウェンガーを吸収合併したそうだ。なんとも寂しい話である。

 

3、靴とサンダル:ローカットの登山靴が便利…だが、それだけだと疲れる

 海外取材での靴は悩ましい。都市部と郊外、ジャングルに砂漠と一度の取材でいろいろな場所へ行くので、これが正解という答えはなかなかない。さすがに航空会社の機内誌で豪華レストランを取材に行くような時はフォーマルな革靴も持参するが、基本はローカットの登山シューズを愛用している。

 本格的な登山家や冒険家と違い、長期間のトレッキングをすることはない。ただし取材目的の村まで丸一日、山道を歩くことは多くある。そんな時、街用のスニーカーではやはり足元がおぼつかない。カメラマンなので荷物も重いし、どうしても少し硬めのシューズが歩きやすいのだ。

 ここ数年、愛用しているのがモンベルのクラッグステッパー。いわゆるアプローチシューズと呼ばれるタイプの登山靴で、本格的な山岳地帯へ入る手前までのトレッキングルートで使用されるシューズだ。

 当然、重い荷物を担いで山道を歩くための靴なので、ソールのグリップ力は高く、そして全体的に硬めに作られている。1万円台で買える、登山靴としては比較的安価なシューズだが、ゴアテックスが使用されていて防水性も高く、熱帯雨林での取材やアンデス高地での移動でも安心だった。

 ただ、いくらローカットとはいえ、硬めの登山シューズをずっと履いているのは疲れるもの。海外の農村や漁村での居候では、家の中でも靴のことが多い。それこそ朝起きてから、夜寝るまで靴を履いているのだから、これはたまらない。

2023.06.18(日)
文=阪口 克