この記事の連載

 国際映画祭の舞台としても知られる韓国第2の都市、釜山は映画やドラマのロケ地として脚光を浴びる一方、昔ながらの港町風情や暮らす人々の篤い情も健在。

 この地に惹かれて通う、カメラマンの衛藤キヨコさんと文章担当の小池花恵さんのユニット「おかっぱとボブ」が案内する、心もお腹もあたたかくなる2泊3日の釜山旅。

【アクセス】

ソウル駅より韓国高速鉄道KTXで釜山駅(約2時間半)または金浦空港から飛行機で釜山・金海国際空港(約1時間5分)。


友達にも自分にもお宝を。ご当地ならではの台所道具

 最終日の朝ごはんはシジミのスープでと話していたが、隣の部屋からメッセージが届く。

「あのさ、今日もタミャン食堂でもいいかな」

 笑ってしまったがそのくらい通いたい食堂ということなのだ。鯖に変わった焼き魚でご飯を搔き込み、満腹のお腹を伸ばしたり引っ込めたりしながらチャガルチ市場を歩く。

 台所道具に目のないおかっぱが、刃物店の前で足を止めた。出刃包丁の手前にあった長方形の小刀が気になったようだ。何を切る物なのかを尋ねてみるとパム(栗)と答えが返ってきた。小刀は栗の硬い皮を剝くためのものだった。2本で10,000ウォン。インゲンや青ネギを切るのにもよさそうだ。

 「寒いから飲んでいって」と、アサリやナッツ類などの乾物が揃う店「プサンタンコン」のアジメがゴボウ茶を御馳走してくれた。

 これもおいしいのよと試食をさせてくれた柿のドライフルーツはクリームチーズと相性がよさそうだ。店奥のストーブの前で暖をとっていた息子さんは、以前福岡の市庁で働いていたそうで日本語がとても上手。市場歩きの前半戦で左腕にぶら下がる荷物がどんどん増えていく。

 昼前に到着した国際市場。ファン・ジョンミン主演の映画『国際市場で逢いましょう』の舞台となった雑貨店「コップニネ」の周辺には台所道具店が点在している。

「アルミのお盆はいくつあってもええやん。チョンゴル鍋もこのサイズは持ってなかったん」

 そう言っておかっぱは道具の積まれた店内に消えていった。

【南浦洞】
チャガルチ市場(チャガルチシジャン/자갈치시장)

所在地 釜山広域市 中区 チャガルチ海岸路 52(부산광역시 중구 자갈치해안로 52)
電話番号 051-713-8000
営業時間 1F水産物市場 5:00~22:00、2F食堂街 9:00~22:00 ※店舗により異なる
定休日 火曜


【南浦洞】
国際市場(クッチェシジャン/국제시장)

所在地 釜山広域市中区国際市場2ギル国際市場 一帯(부산광역시 중구 국제시장2길국제시장 일대)
電話番号 051-242-8253(昌善観光案内所)
営業時間 9:00~20:00 ※店舗により異なる
定休日 第1・3日 ※店舗により異なる

2023.06.06(火)
Photographs=Kiyoko Eto
Text & Coordination=Hanae Koike

CREA 2023年春号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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