2022年に崩御を惜しまれたエリザベス女王が遺した数々の金言と、色鮮やかなフォトスナップをまとめた『英国女王が伝授する 70歳からの品格』(KADOKAWA)が刊行された。
同書から、エリザベス女王の印象的なワントーンコーデ(一色つかい)の意図と、女王の華やかなファッションの立役者についてのコラムを抜粋し、掲載する(前後編の前編/後編を読む)。
赤、ピンク、黄色、ブルー…エリザベス女王の大胆な「一色コーデ」を見る(19枚)
◆◆◆
女王の「一色つかい」、その“深すぎる”ワケ
女王のワードローブは、多くの人たちの称賛の的だ。特に、鮮やかな赤、オレンジ、黄などを見事に着こなすさまにはため息がもれた。
女王のワントーンコーデ(一色つかい)は、ご自分が着飾るのが目的ではなく、国民に見てもらいたい、という気持ちからだった。一目で女王であると認識してほしいのだ。国民の3 人に一人が女王を見たことがあるという BBC の調査結果がある。
女王は、国民に見てもらうために洋服を選ぶ。目立つ色なら「女王」とすぐにわかってもらえるし、明るい色なら気持ちも晴れやかになる。
前から後ろから横からも、すぐに「女王にお会いした」と思えるように心がけた。女王を見るために長時間並んで待った人も多いに違いない。そういう人たちに、楽しくうれしい気持ちになって帰ってほしい。鮮やかな色遣いの選択は国民のためだ。
これで、もっとも「着ない色」がグレーであるのも説明がつく。グレーもすてきな色合いではあるが、国民と会う時にわざわざ選ぶことはなかった。
専属ドレッサーはアンジェラ・ケリーさんだ。女王が亡くなるまで25 年以上、ワードローブを一手に引き受けた。リバプールの縫製職人の家庭に生まれ、王室の面接を受けるために電化製品を売ってロンドンまでの交通費を工面したといわれている。
王室に入るとめきめき頭角を現し、女王のファッションはすべて彼女の息がかかったものになった。強風でスカートがめくれないように、裾に小さな鉛のおもりをつける工夫をしたのもケリーさんだ。女王からは王室での数々の思い出を綴った本の出版許可も下りている。
何より彼女を有名にしたのは、靴の履きならし役であったことだ。女王が新しい靴(アネーロ& ダヴィデ)をおろすときに靴ずれができて痛み、歩けないようなことが絶対ないように、サイズが同じケリーさんがまずしばらく履くのが常だった。女王からは「私たちは双子のようね」という言葉を掛けられている。
〈不倫を経て再婚〉カミラ王妃を嫌っていたが…エリザベス女王の評価が“一転”したワケ へ続く
2023.05.17(水)
文=多賀幹子