この記事の連載
- 今井登茂子さんインタビュー
- 『さりげなく品と気づかいが伝わる ちょい足しことば帳』より
私はコミュニケーション下手だった
──今井さんもことばのプロとして、ずっとこの「ちょい足しことば」を使ってこられたのですか?
今井 私はコミュニケーション下手だったので、ちょい足しことばなんて全然使えませんでした。学生時代は声のかけ方がわからなくて友達がうまくつくれませんでしたし、TBSにアナウンサーとして入社してからも、周囲と難なくコミュニケーションをとる同僚に焦りを感じているようなタイプだったんです。
でも、自分がコミュニケーション下手だと認識していたからこそ、まわりの会話上手な人を徹底的に観察し、ちょい足しことばの効果に気がつけたように思います。そういう意味では、コミュニケーション下手でよかったのかもしれませんね。
──ちょい足しことばを使うと、なぜコミュニケーションがうまくいくのでしょうか。
今井 ちょい足しことばには、相手への関心や相手を敬う気持ちが含まれているからです。誰でも自分に関心を向けてくれる相手と話すと気持ちが満たされますよね。「もっと聞いてほしい」「もっと話したい」という気持ちになれば自然と会話が続きますし、相手が自分の話をしっかり受け止めてくれていることがわかれば、相手を好きになり「あなただから話したい」という気持ちになります。だから、ちょい足しことばを使うと、会話が弾むのです。
──オンラインの画面上でもちょい足しことばの効果はありますか?
今井 リモートでこそ、ちょい足しことばを使うべきだと思います。一対一は別として、複数人でリモート会議を行う場合、話し相手の目を見ているようで見ていないでしょう? だからこそ、相手の状況に対する気づかいと、「あなたのことを思っています」という思いを伝えるちょい足しことばが必要だと私は思います。
「いいね」マークを送れば「YES」という意思表示はできますが、相手を安心させるちょい足しことばを使うことで、より信頼感を高めることができると思いますよ。
2023.05.18(木)
文=相澤洋美
撮影=釜谷洋史