花を買って家に飾る、それだけでも十分に豊かな時間を過ごせるけど、花の楽しみ方はノールール。今まで知らなかった新しい花との付き合い方を、フラワーデザイナーの佐藤俊輔さんがお届け。もっと自由に花と触れ合って、プレイフルな日々を楽しもう。
トレンドのピンクを花飾りでもとことん楽しもう

本格的な花の季節がやってきました。チューリップ、桜、ラナンキュラス、アネモネ、スイートピーなどが花屋さんに並び、思わず目移りしてしまう方も多いのではないでしょうか?
一般的に、春っぽい花飾りをしたいときには、フワフワとした質感の花や、淡いピンクや黄色の花をセレクトすると、柔らかな春の日差しのようなアレンジをすることができます。
では、「今年(2023年)の春を意識した花飾り」について、イメージすることができるでしょうか? 花業界にはその年のトレンドの花や品種、装飾スタイルが存在し、ホテルやデパートの花飾りに取り入れられています。ただ、この飾り方を自宅で楽しむには少しハードルが高いかもしれません。
そこでおすすめなのが、「ファッションのトレンドを取り入れた花飾り」です。ファッションのトレンドは、その年ごとや季節ごとに変わり、さらに細かくみていくと春ひとつとっても、梅春、桃春などと細分化されていたりします。このトレンドを少し取り入れることで、「春っぽい」アレンジではなく、「今年の春っぽい」アレンジを手軽にすることができますよ。

大きなコレクションが開催されると、各ファッション誌はそのコレクションのトレンドスタイルの講評を一斉に発表しますが、2022-23年秋冬コレクションはネオンカラーやフューシャピンクといったキーワードが大きな話題を呼びました。2023年春夏コレクションやメイクの世界でも依然としてピンクが注目され、ベビーピンクからビビッドなピンクまで、様々なピンク色のアイテムが多数登場しています。
パンデミックによって世界中が色々な不自由を経験し、それを乗り越えていく過程にある現在、気分を高揚させてくれる「ピンク」が求められているのかもしれません。
では、トレンドカラーのピンクの中から、特に気分が上がるフューシャピンクを中心に、2023年春の立ち上がりのアレンジを楽しんでみましょう。

まず飾りたいのが、アネモネです。アネモネはギリシャ語の「アネモス(風)」が名前の由来で、春のこの時期が旬の花です。他の花に比べて濃い色が多いので、フューシャピンクをはじめビビッドなカラーを探しやすいと思います。
花屋さんの店頭では色々な色がミックスされて並んでいることが多いので、好みの色のものを選ばせてもらいましょう。花の顔が大きいのでゆったりとした花器に、水は浅めで生けましょう。

こちらも今が旬のラナンキュラスは、コロンとした愛らしい姿で近年バラをもしのぐほどの人気を誇っています。ラナンキュラスは花色も、咲き方の種類も豊富なのですが、その中でトレンドのピンクに合わせてセレクトしたいのが「シャルロット」という品種です。
少しちぢれが入った花びらが大輪に開くシャルロットは、真ん中の黒い芯がポイントになっており、アネモネ咲きとも呼ばれています。先ほどご紹介したアネモネとアネモネ咲きのシャルロットを並べて飾って比べてみても面白いかもしれません。
2023.03.20(月)
文=佐藤俊輔
撮影=平松市聖