こうした関係性は、日本国内でも時折見られる。2022年に皇后の仕事である養蚕の様子の写真が公開されたが、そこには雅子皇后だけではなく、天皇、そして愛子内親王まで一緒にその作業に取り組む姿が写し出されていた。家族一緒の姿と言えるだろうか。ここでは、むしろ皇后が主導しながら(皇后の仕事である養蚕であるゆえ、それは当然ではあるが)、天皇に時に指示をしつつ養蚕の仕事を手伝ってもらっているような状況も読み取れる。

 

イギリスで見えた両陛下の関係性の今後は

 天皇と皇后の関係性を示すエピソードはコロナ禍にもあった。天皇と皇后がそろって画面に並び、国民に呼びかけた新年のメッセージである。これは、新しい令和の皇室のあり方なのかもしれない。平成の天皇は、テレビ画面で国民に呼びかけた時、1人で画面に映った。録画していた場所の近くに皇后がいたとも言われるが、決して映ってはいない。しかし、令和の天皇と皇后は2人で並び、そして国民にメッセージを呼びかけた。その点では、より2人で公務を担うという形を示したとも言える。

 しかも、2021年のメッセージでは、雅子皇后が話しているとき、天皇の口元が動いているのが画面を見ているとよくわかる。皇后を心配しつつ、だからこそ自然にその言葉を反芻したのか、口元が動いてしまった天皇。そこには天皇が病気療養中の皇后を支える姿が映し出されている。それも皇后が天皇を支える平成のあり方とは異なる像だろう。ここには、令和の天皇と皇后の新たな関係性が見えてくる。

 イギリスから帰国後、国民体育大会に出席するために栃木県へ(日帰り)、国民文化祭に出席するために沖縄県へ(1泊2日)、全国豊かな海づくり大会に出席するために兵庫県へ(1泊2日)天皇と皇后は出かけている。2人が一緒になって公務を行う姿は、いわゆる「平成流」の継承であるかと思われる。

 では、イギリスなどで見えた2人の関係性が、日本国内の公務などにおいても今後、見えてくることはあるのだろうか。それこそ、新しい「令和流」なのかもしれない。

2022.12.17(土)
文=河西 秀哉